AIは新手のテロを生むことはないにせよ、テロをより安上がりで、より迅速かつ簡単な攻撃にするだろう──今年7月に米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が発表した報告書はそう論じている。説得力のある主張だが、1点疑問が残る。多様なテロ組織がこの技術について全く同じ見方をしているのか。

テロ専門家として、筆者は今世紀で最も影響力のある2大ジハード主義組織、アルカイダと「イスラム国」(IS)のプロパガンダ、手引書、戦略に関する文書を分析し、AIなどの新技術を彼らがどう解釈し、利用するかを突き止めようとしてきた。

併せて、この2つの組織の系列組織、系列メディア、支持者たちのAI利用の記録も調べた。

その結果、アルカイダ、IS共に、プロパガンダや戦闘員の勧誘、戦闘員個人と組織の防衛、計画立案にAIを活用していることが分かった。ただし、その使い方は異なり、それぞれの戦い方を反映している。

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ISは以前から斬新な手法によるメディア攻勢で知られ、その最盛期、つまりシリアとイラクにまたがる「カリフ制国家」の樹立を宣言した時期に高度なメディア戦略を確立。プロ並みの技術を駆使して衝撃的な映像を制作し、迅速に拡散させてきた。

この得意技はAI時代にも受け継がれ、デジタルネイティブの若い支持者や新入りの戦闘員らが新たなツールを試そうと腕を鳴らしている。

2023年以降、ISの支持者と系列組織はAIが生成したコンテンツをプロパガンダにフル活用してきた。24年3月、ロシアの首都モスクワ郊外のコンサートホールで起きた銃乱射テロ事件後には、殺戮を礼賛するニュース映像を支持者たちがネット上で拡散させた。

これはAIが生成したフェイク映像で、ニュースキャスターがアラビア語で、敵を震え上がらせたこの襲撃はISのより広範な戦いの一環だと解説する。

アルカイダも、AIの活用に動いている

IS系列のメディアはフェイク映像の生成にAIを使うほか、翻訳にもAIを活用して何カ国もの言語でプロパガンダを展開している。

24年に銃乱射テロ事件が起きたモスクワ郊外のコンサートホール。殺戮を礼賛するAI生成映像が拡散された
24年に銃乱射テロ事件が起きたモスクワ郊外のコンサートホール。殺戮を礼賛するAI生成映像が拡散された ALEXEY BYCHKOV-ZUMA-REUTERS

アフガニスタンに拠点を置くIS系の「ISホラサン州」(IS-K)の機関誌「ボイス・オブ・ホラサン」に掲載された論考は、AIリテラシーの習得は全てのイスラム教徒に課された宗教的な義務であると述べている。敵が既に使っている技術に無知であれば、弱い立場に置かれる、というのだ。

こうした事例からも、ISはAIが戦争の性質を変える可能性を問うよりも、AIの活用法、敵のAI活用への対処法、AI時代に乗り遅れない方法に関心があるとみていい。

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アルカイダの系列組織や支持者も、AIの活用に向けて動いている。

アルカイダ支持系メディアは既に23年の時点で、AIで生成された可能性の高い画像を拡散していた。24年にはアルカイダ系の「アルマラヘム電子軍」が、「AI搭載チャットボットの驚くべき利用法」と題する手引書を公開した。

昨年7月には国連が、ソマリアのアルカイダ系組織アルシャバブがAIツールを使い、発信内容を複数の言語に翻訳していると報告している。

インド国家捜査局は今年5月、昨年11月に首都デリーで起きた自動車爆発事件の容疑者らを起訴した。捜査当局によれば、犯行グループは「インド亜大陸のアルカイダ」と関係があり、メンバーのエンジニアはYouTubeとチャットGPTを使って爆発物について調べていた。

さらに一部のアナリストは、西アフリカのアルカイダ系組織による最近のドローン改良に、オープンソースのAIツールが使われている可能性を指摘する。

このようにIS系もアルカイダ系も、AIの使い方とその危険から身を守る方法を支持者に教えている。だがアルカイダ系メディアの一部は、別の問いも投げかける。AIは戦争の本質を変えるのか、という問いだ。

最も明確な例が、アルカイダ支持の「アナジアット財団」だ。この組織は昨年、AIやサイバー戦、技術革新などに関する欧米の戦略思想の文献をアラビア語に翻訳し、「フィクフ・アルハルブ(戦争の法学)」と題する6部シリーズとして公開した。

技術的に優位な敵に、政治的意思と忍耐力で打ち勝つ

ある論考はAIと戦争の未来を検討し、別の論考は戦略家もAIをめぐる哲学的な問題を真剣に考えるべきかを問う。さらに2つの論考が、AIが戦争の本質を変える可能性を議論している。

シリーズを通して読むと、人間の主体性、意識、政治的目的、忍耐力、意思といった問題に繰り返し立ち返っている。ここで注目すべきなのは、AIについてどのような問いを選び取っているかだ。

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2つの組織のアプローチの違いは、それぞれの特徴を反映している。歴史的にアルカイダはより忍耐強く慎重で、自らの闘争を長期戦と位置付け、発信する内容も注意深く吟味してきた。戦略の根底にあるのは技術的に優位な敵に対し、政治的意思と忍耐力で打ち勝つという賭けだ。

両組織の実際のAI利用には、共通する部分が多い。違うのはAIをどう理解し、目先の利用法を超えてどのような問いを投げかけるかだ。

IS系の議論では、AIは主に今すぐ使いこなすべきツールと見なされている。アルカイダ系の一部も同じように考えているが、AIを戦争や戦略的勝利をめぐる長期的な議論の中にも位置付けている。

こうした組織文化の違いは、両者が次にどのAIツールを導入するかだけでなく、何のために、どのように使うかを左右する可能性がある。

The Conversation

Sara Harmouch,Research Fellow in Counterterrorism,George Washington University

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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