Manya Saini
[29日 ロイター] - スマートリング・メーカーのオーラは29日、米国で予定していた新規株式公開(IPO)を延期した。市場環境が不安定化して投資家の新規上場銘柄に対する需要が弱まっており、注目企業が上場計画を見送る動きが相次いでいる。今月に入ってからは、原子力サービス会社ホルテックが予定していた米IPOを停止したほか、バンブー・インシュアランスも上場を先送りした。
米IPO市場は年初に好調な滑り出しを見せたものの、人工知能(AI)インフラへの巨額投資が持続可能かどうかを巡る疑念や、高水準にある企業価値を投資家が改めて精査する動きが影を落とし始めた。債券利回りの上昇に加え、米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げへの懸念、地政学的な混乱も投資家心理の重荷だ。
マージャーマーケットの株式資本市場グローバル責任者サミュエル・カー氏は「数週間前に想定していたIPO市場とは全く異なる状況にあることが明確になった。非常に優れた収益性を持つ企業であっても、これまで以上に厳しく精査されるだろう」と述べた。
オーラと一部の既存株主は、IPOで5000万株を1株40-44ドルの仮条件で売り出す予定だった。仮条件レンジの上限で価格が決まった場合、調達額は22億ドル、完全希薄化後の企業価値は156億2000万ドルとなる見通しだった。
当初は29日中に公開価格を決定し、30日にナスダック市場で取引を開始する運びになっていた。フィンランドで10年以上前に創業したオーラは、昨年の資金調達で約110億ドルの企業価値と評価されていた。
IPOXリサーチのアソシエート、ルーカス・ミュールバウアー氏は「金利上昇によって、投資家が特に成長企業の評価に対して明らかに選別姿勢を強めている」と指摘。もっともAI開発企業アンソロピックが大型IPOに向けた計画を進めていることから「IPOの窓口が閉じたとは言えない」と付け加えた。
オーラの上場は、夏場の閑散期を終えた秋の米IPO市場で初の大型案件になる予定で、高成長企業に対する投資家需要を測る試金石として注目されていた。トム・ヘイル最高経営責任者(CEO)は「従業員と投資家にとって素晴らしいIPOを実現することを目指しており、われわれには時期を選べる余裕がある。その間も目の前にある成長機会を着実に実行していく」と強調した。同社によると、事業は黒字化しており、2026年度の売上高は前年度比90%増を見込んでいる。
ミュールバウアー氏はオーラのIPOについて「募集額に対して約4倍の需要があったと報じられている。十分な需要ではあるが、知名度の高い消費者向けブランドとしては必ずしも圧倒的とは言えない」と分析した。
オーラは心臓の健康状態や身体活動、睡眠などを計測するスマートリングの普及をけん引してきた。同社によると、主力製品「オーラリング5」の発売後の反応は「極めて好調」で、プラットフォームの有料会員数は570万人に達した。
スマートリングは、従来型のフィットネストラッカーとスマートウオッチの中間に位置する製品として市場を開拓している。小型で画面を持たず、長時間着用しやすいほか、一般的にバッテリーの持続時間が長く、個人の健康状態に応じた情報を提供できることが特徴だ。