<2018年の平昌冬季五輪をきっかけに、南北や米朝の首脳会談が実現した。今回のアジア大会も日朝にとってチャンスのように思えるが、現在の北朝鮮を交渉の場に引き出すのは容易ではない>
名古屋市でアジア大会が始まった。スポーツ国際大会の数が増え、相対的な凋落が指摘されるアジア大会であるが、それでも今回の大会には役員を含めて1万7000人以上が参加する。オリンピックに次ぐ規模のスポーツ大会であることには間違いがない。
多くの国から選手団が集まれば、自然と外交交渉の機会も生まれる。そこで1つの注目の的となるのが北朝鮮の存在だ。2018年の平昌冬季五輪では金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹の与正(ヨジョン)が韓国を訪問し、その後、南北さらに米朝の首脳会談が相次いだ。今回の大会でも金日国(キム・イルグク)体育相が、北朝鮮の閣僚級として8年ぶりに訪日した。日本政府は北朝鮮との首脳会談を視野に拉致問題の解決を模索しており、韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権も北朝鮮との対話再開に向けた環境づくりを進めている。
とはいえ、今回の機会が日韓両国と北朝鮮との本格的な交渉につながるかと言えば、疑問符が付く。背景にあるのは、四半世紀余りの間に北朝鮮を取り巻く環境が大きく変化したことである。
2000年6月の初の南北首脳会談や、02年9月の小泉純一郎首相との日朝首脳会談など、00年代初頭に北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)は活発な外交活動を行った。その背景には、1990年代を通じて深刻化した北朝鮮の経済危機があった。
危機をもたらした要因の1つは、背後に控える中ロ両大国とのギクシャクした関係だった。ソ連崩壊後のロシアは北朝鮮への支援を大幅に縮小し、ソ連時代から残された巨額の債務問題が関係の障害となった。中ロ両国は北朝鮮の核開発からも距離を置き、その後行われた六者協議は非核化を共通の目標として行われた。だからこそ金正日は、日韓両国やアメリカとの関係改善に活路を求める必要があった。