[21日 ロイター] - 事情に詳しい関係者によると、中国の規制当局は人型(ヒューマノイド)ロボット企業の新規株式公開(IPO)の急増にブレーキをかけている。国の支援を追い風にした人型ロボット企業の評価額と収入の高騰が、実際の商業的な需要を反映しているかどうかを精査しているという。

関係者によると、大きな引き金となったのは人型ロボットや四足歩行ロボットを製造する宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス) の株価が上場後に乱高下したことだ。同社の株価は8月の上海証券取引所での上場初日に5倍超になったが、その後は最高値から55%下落した。

規制当局は、非公式の「窓口指導」によって一部の人型ロボット企業のIPOを抑制しているという。

関係者の1人は、人型ロボット企業のIPOは事実上、当面凍結されていると説明。これに対し、別の関係者は正式な禁止措置はないとし、この動きは業界特有のIPO減速だと説明した。

今回の規制措置には、政府が国家の優先課題と位置づけている技術を損なうことなく、中国で最も注目を集める投資分野の一つに対する投資家の熱狂を冷ます狙いがある。

中国の証券市場​を監督する中国証券監督管理委員会(CSRC)はコメントの要請に応じなかった。

米オンラインメディア「ザ・インフォメーション」は、事情に詳しい関係者らの話としてCSRCが最近、一部の投資銀行や投資会社に対して人型ロボット企業のIPO承認の基準を引き上げるという非公式なガイダンスを出したと報じた。

中国のプライベートエク​イティ(PE)ファンド、乾創資本のベンチャーキャピタリスト、レオ・ワン氏によると、一部の人型ロボット企業創業者は数週間のうちに数十社の投資家候補を引きつけており、従来のデューデリジェンス(適正価値調査)を拒否している。一部の非上場プロジェクトは、評価額が既に30―50%引き下げられている。

既にディープ・ロボティクス、Xスクエア・ロボット、智元機器人(AGIBOT)など少なくとも6社の中国人型ロボット企業がIPOの準備を進めている。ディープ・ロボティクス、Xスクエア・ロボット、智元機器人の3社は、規制当局の影響で上場計画が遅延しているかどうかについてのロイターのコメント要請に応じなかった。

<精査の対象となっている収入源>

人型ロボットの投資家に近い関係者によると、規制当局はロボット企業が地方自治体の支援を受けたプロジェクトを通じて生み出している収入が持続可能かどうかを特に注視している。

この関係者によると、ロボットを訓練するデータ収集センターや、地方自治体が初期投資の80―90%を負担する合弁事業が一部企業の大きな収益源となっている。

こうしたプロジェクトは、民間市場での企業評価額を支える受注をもたらし、企業が上場基準を満たす一助となる。だが、規制当局はそれらが独立した顧客からの需要を反映しているのかどうかを疑問視している。

この関係者によると、データ収集センターに関連した収入を除外した場合、一部のロボット企業の評価額は60―70%下落する可能性がある。

そうした収入の質が疑問視されているのに加え、顧客が実際に何を購入しているのかについても不確実性が残る。

メックマインド・ロボティクス の邵天蘭最高経営責任者(CEO)は対話アプリ「微信(‌ウィーチャット)」への今月の投稿で、評価額が高騰しているエンボディッドAI(身体性をもつ人工知能・ロボット頭脳)企業の一部がIPOに向けて急ピッチで準備を進める中で、データ収集センターや関連当事者間取引などの持続不可能な仕組みを通じて収入を上げていたと指摘した。

邵氏は、自身の投稿内容以外についてのコメントを差し控えた。

メックマインドの株価は、上場した今月1日に付けた高値から20%弱下落している。

<「全面的な熱狂から選択的な合理性」へ>

経営陣や投資家らは中国当局の規制強化について、中国政府が人型ロボット分野から後退することを意味するものではないとの見方を示す。人型ロボットの実用性と受注量、そして企業が「技術デモ」を商業的に成立する製品へと転換できる証拠をますます重視していることの表れだという。

S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのシニアリサーチアナリストの趙瑞英氏は、投資家心理が「全面的な熱狂から選択的な合理性」へと移行しており、商業的価値が評価額のプレミアム(上乗せ価格)を正当化するかどうかについてより厳格に精査されていると言及する。

こうした慎重な姿勢が見られる一方で、中国本土企業の資金調達の動きは回復基調にある。LSEGのデータによると、2026年に入ってから株式売り出しや転換社債の発行で総額1489億ドルを調達しており、前年同期比で59%増えた。うちハイテク企業が調達額の41%を占めた。

アジアのIPOに携わる銀行幹部は、投資家は引き続きロボット企業への資金提供に前向きなものの、導入状況や生産量、評価額についてはより厳しい目を向けるようになっていると話す。その上で「具体的な活用事例は何か。単に人型ロボットが踊っているだけなのか。それとも工場で稼働しているのか」とし、「生産量はまだ過熱した期待感に追いついていない」との見解を示した。

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