母 「あれ?これって仮に逮捕されるとしても(平和丸の)船長だけで終わりになるんじゃない」と2人で話す時間も増えてきました。事故後、さまざまな映像を手に入れることができて、私たちでも検証しましたが平和丸の船長たちが救助活動を行えば、知華は助かっていたのではないかと。それなのに彼らは何もしていません。あまりにも無責任で、学校がなぜ彼らに運航を任せたのかも納得いきませんでした。それなのに彼らの責任を問うのは難しいという話ばかりで、弁護士に会って話を聞き、帰宅するたびに泣いていました。
──その最中、5月28日に知華さんを偲ぶ会が同志社国際高校で開かれています。その前日に学校側と個別の交渉があったと伺いました。そこで何が話されたのでしょうか。
【編集部注】学校法人同志社は事故翌日の3月17日に謝罪を公表し、同28日、外部の弁護士による特別調査委員会を設置した。文科省は4月に現地調査を行い、5月22日、安全管理や研修旅行の計画を「著しく不適切」とし、辺野古をめぐる学習についても政治的活動を禁じた教育基本法14条2項に反すると判断、同志社に改善を指導した。7月25日には海上保安庁が同志社国際高校を家宅捜索。同31日、特別調査委員会が調査報告書を提出した。
父 私が個別で話を聞きました。部屋に入ると学校側の弁護士が4人、ずらっと私の目の前に座って、校長と事務方が部屋の隅に座っていました。彼らが「今の時点でこういう話をするのはどうかと思いますが、今後の流れとして……」と前置きして、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」──私たちもこういうものがあると後から知ったのですが──に照らし合わせた基準を書類として提示してきたのは事実です。そこに具体的な額こそ記載されていませんでしたが、私は唖然としました。
事前に相談していた友人の弁護士から「とりあえず何を出されてもサインはしてはいけない。最初は “はい” とも “いいえ” とも言わずに受け取るだけでいい」とアドバイスを受けていたので、書類を受け取るだけは受け取りましたが……。
その後、友人は学校側の書類を見て、これは法曹業界でいわゆる「赤本レベル」と呼ばれるもので、特殊な事情を一切考慮しない一般的な交通事故の賠償基準について書いてあるものだと教えてくれました。加えて彼は「しかし、何も言わずに受け取れとは言ったけど、よく耐えたな。さすがに机を蹴って出ていくレベルだよ」と言ってくれたのです。おかしいと思った自分たちは正しかったんだなと確信しました。