Howard Schneider Jacob Bogage

[ワシントン 23日 ロイター] - トランプ米大統領は、金利についてもっと知っていても良いのではないか。生涯にわたって不動産投資を手掛け、借り入れと金利を前提に事業を築いてきたからだ。ところがトランプ氏が米連邦準備理事会(FRB)に繰り返し求めているのが「1%」の政策金利で、複数の専門家の分析ではこれは現実的ではなく、むしろ逆効果になりかねない。

現在3.75-4%の政策金利をそこまで一気に引き下げれば、世界の金融システムに大きな混乱を引き起こす公算が大きい。結果的には、米政府が債券市場で資金を調達する際に支払う金利が、現在よりも高くなる恐れさえある。

トランプ氏に近い一部の関係者は、1%という金利要求を具体的な政策提言として受け止めるべきではなく、11月の中間選挙を前に、消費者物価の高さなどの問題から国民の目をそらすための手段とみるべきだと話す。

しかし投資調査会社DASMの創業者J・ベンソン・ダーラム氏は、実際にFRBが3%ポイントもの利下げに踏み切れば「壊滅的な事態になりそうだ」と警告する。ダーラム氏の見立てでは、投資家がインフレ率の上昇を織り込むことで米国債利回りは上昇し、ドイツなどが米国よりわずかに高い利回りを提示するだけで資金を吸収できるようになるほか、ドルは「急落する」という。

こうした債券市場の力学やFRBの信認に悪影響を及ぼす懸念があるにもかかわらず、トランプ氏は超低金利を繰り返し要求している。トランプ氏の言い分に基づくと、米国は世界最大の経済大国であり、最も安全な信用力を持つ国だから、低い借り入れコストを享受して当然、となる。

<非現実的>

FRBがウォーシュ議長の下で先週利上げに踏み切ると、トランプ氏はその決定を批判し、改めて1%という数字を持ち出した。

もっとも保守系団体「アメリカンズ・フォー・タックス・リフォーム」の代表で、トランプ氏の外部経済顧問も務めるグローバー・ノーキスト氏は「大統領は彼なりのやり方で『こんな痛みは受け入れたくない』と言っているのだ。ただ、利上げせざるを得ない状況になったことについて、FRBに責任があるわけではないという点は明確にすべきだ」と注文をつけた。

選挙を前にインフレを抑えることが重要になっているため、トランプ氏の複数の側近は、利上げを決めたウォーシュ氏を内々では評価していた、と関係者の1人も明かしている。

ウォーシュ氏との連絡役を務める政権に近い人物はロイターに、世界の債券市場の仕組みを考えれば、1%を求めるのは非現実的だと語る。「みんな、いい加減に目を覚ましてくれないか。債券市場をおかしくすれば、得をするのは債券投資家だけで、それ以外の誰にとってもプラスにはならない」と強調した。

ホワイトハウスはコメント要請に応じず、FRBもトランプ氏の発言について言及しなかった。

<責任転嫁>

トランプ氏によるFRBへの圧力は、政策金利を1%にするよう求めるだけにとどまらない。トランプ氏は、バイデン前大統領が任命したFRBのクック理事を解任しようとしているだけでなく、パウエル前議長がFRBの建設プロジェクトを監督していた問題を巡り、監察総監による調査結果を待っている。パウエル氏は現在もFRB理事に残っているため、トランプ氏はFRBの新たな理事を指名できない状態にある。

一部のアナリストの分析では、中間選挙を前に住宅ローン金利が7%近くまで上昇し、牛ひき肉やガソリンといった生活必需品の価格も値上がりする中で、FRBはトランプ氏にとって格好の「責任転嫁先」であり続けている。有権者の間で、生活費を賄えるかどうかという問題が改めて大きく浮上しているためだ。

インフレ率はトランプ政権初期と比べて上昇。その背景には、トランプ氏の関税政策と、米国の対イラン戦争に伴うエネルギー価格上昇が重なったことなどがある。

FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数の前年比上昇率は7月に3.7%となった。またFRBは、PCE物価指数の前年比上昇率が目標の2%まで低下するのは2029年以降になると見込んでおり、トランプ氏の任期を通じてインフレ率が高止まりする可能性がうかがえる。

<直接批判せず>

大統領は公式の場では、自らパウエル氏の後任に選んだウォーシュ氏への直接的な批判をおおむね控え、FRBの他の政策担当者に矛先を向けている。パウエル氏が議長だった際、トランプ氏による再三の利下げ要求や利上げ見送りの要求に応じなかったことから、トランプ氏はパウエル氏を「敵」「まぬけ」などと罵倒していた。

これに対し先週、トランプ氏はウォーシュ氏について「政治的」な理事会によって身動きが取れない状況に置かれているとの見方を示した。

FRBが3年余りぶりとなる利上げを全会一致で決めた後、トランプ氏は決定前の電話でウォーシュ氏に対し、必要なら多数派に同調しても構わないと伝えていたとも明らかにした。

ウォーシュ氏は、トランプ氏との会話については話さないとしている。

<対話のパイプ維持>

トランプ氏がウォーシュ氏に対して比較的自由な裁量を認めている背景には、新議長の就任当初から両者が比較的良好な関係を築いていることがあるのかもしれない。

トランプ氏は第1次政権の早い段階から、利上げを巡ってパウエル氏を批判するようになり、その後も両者の緊張関係は続いた。パウエル氏がトランプ氏の言動に公然と反論するようになったのは今年初めになってからで、それはFRBの改築プロジェクトを巡り、政権が大陪審の召喚状を送付した時期だった。

一方、ウォーシュ氏とトランプ氏の関係はより友好的に見える。ウォーシュ氏は大統領からの電話に応じながらも、金融政策については独立した立場を維持するとしている。

そして、その金融政策は現在、インフレに対して一段と厳しい姿勢へと傾きつつある。

世論調査によると、記録的な高値となったディーゼル燃料価格など、家計に直結する問題が与党共和党支持の強い農村部の経済や中小企業を圧迫している。またトランプ氏の支持率が過去最低水準に落ち込んでいることは、共和党の議会選挙候補者にとっても重荷だ。

21日に公表されたロイター/イプソスの世論調査では、生活費問題へのトランプ氏の対応を評価すると答えた人はわずか17%だった。生活費は、米国の有権者が6週間後の投票先を決める上で最も重要だと回答している。

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