<衝突時に放出されたエネルギーはM5.2の地震に匹敵したという>

[ロンドン発]8月26日、ネパールと中国チベット自治区の国境沿いにあるランタン・リルン山で巨大な崩落に端を発する複合災害が発生した。崩落した岩石と氷河は谷底に堆積していた氷や堆積物を巻き込み、土石流さらには鉄砲水となって下流に壊滅的被害をもたらした。

岩壁と氷河は約1400メートル下の谷底に滑落・崩落し、衝突時に放出されたエネルギーはマグニチュード(M)5.2の地震に匹敵する規模だった。滑落・崩落の際の摩擦熱や力学的エネルギーが氷を急速に融解させ、水量を爆発的に増大させた。

ネパール政府によると、9月16日時点で確認された死者数は1403人。依然として6150人以上が行方不明のままで、救助された住民は約1万3742人、手当てを受けた者は9840人を数える。

長期的な気温上昇と雪から雨への変化

国際的科学者プロジェクト「ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)」は、長期的な気温上昇と雪から雨への変化が氷で充填・膠着されていた岩盤の亀裂や、岩盤と氷の接触面を脆弱化させ、間隙水圧を増大させることで斜面の安定性を低下させたと分析している。

人為による気候変動が崩落の根本原因というより、あらかじめ存在していた地質学的な脆弱性に作用し、それを不安定化させたと指摘している。2015年に発生したマグニチュード7.8のネパール・ゴルカ地震が岩盤構造を長期間にわたって弛緩・弱体化させていた可能性がある。

標高5000メートル超の高山帯における気温上昇は基盤岩の地温を上昇させ、岩盤の割れ目を結合していた永久凍土を融解させた。氷の膠着力の喪失は割れ目のせん断強度を低下させ、生じた融解水は亀裂内部の水圧を著しく上昇させる。

ランタン・リルン氷河の後退速度は2010年以降、急加速
【関連記事】