全く別個に進められていた2つの研究

時を同じくして、明治ホールディングスの研究グループが自社保有の「乳酸菌OLL1073R-1株」が産生する「R-1 EPS(菌体外多糖)」に関する基礎研究を進めていた。R-1 EPSを摂取すると、小腸にある「パイエル板」という免疫の基地で特定のT細胞が活性化し、抗腫瘍免疫を高めるメカニズムを解明していたのだ。

この2つの研究は全く別個に進められていたものだった。「正直に言うと、最初は『ヨーグルトで癌免疫が活性化するなんて』と、ほとんど信じていませんでした。しかし、学会で明治の研究者から『R-1 EPSで活性化されるT細胞と、(各務)先生の研究しているT細胞が非常に似ている』と声をかけられたのが転機でした。彼らの基礎研究データは極めて緻密で、否定し難いレベルまで証明されていた。彼らが着目していた『CCR6』という性質を持つT細胞と、私が肺癌患者から見つけたT細胞の性質が見事に一致したのです。全く別の領域からスタートした2つの研究が、1つの細胞を介して交わった瞬間でした」と各務教授は説明する。

こうして埼玉医科大学と明治ホールディングスの共同研究グループが発足。各務教授が発見したT細胞は「Th7R」と名付けられた。Th7Rは癌治療において極めて重要な役割を担っている。

「風邪などのウイルス感染に対する免疫は、数日で相手を駆逐する『短期決戦型』のシステムです。しかし、癌は何年にもわたり免疫細胞とのせめぎ合いが続く『長期戦』の病気です。従来の免疫システムだけでは長期間、癌と闘い続けることができませんでした」

長期戦の司令官となるT細胞
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