Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東京 31日 ロイター] - 米国のベセント財務長官がロイターのインタビューで日本の財政・金融政策に言及したことに対し、日本政府内からは高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」や日銀の利上げ判断への影響を指摘する声が上がった。米国が日本に抱く懸念が明示的になったとの受け止めが聞かれ、過去最大の規模に膨らむ見通しの来年度予算編成プロセスが本格化する中、高市氏の判断により注目が集まることになる。

<「政権を攻撃する材料にもなる」>

「ただ一歩引いて『アベノミクス』の成功を享受し、その流れに任せる(let that run)べきだと思う」。ベセント氏は30日、ロイターのインタビューで日本の財政政策を巡ってこう述べた。デフレからの脱却を目指し、大規模な金融緩和や財政による需要刺激策に注力した安倍晋三元首相の政策は「成功」し、現在は労働市場の規制緩和など政府の関与を減らす「タカイチノミクス」に移行したとの認識も示した。

複数の日本政府関係者によると、米国はこれまでも日本に対し、高市氏の財政政策への懸念を伝えてきた。関係者の一人は「消費減税なんてやめてしまえ、というのが米国の一貫した本音だ」と明かす。一方で、高市氏自身が「悲願」と言い切る看板政策を撤回すれば政権へのダメージは計り知れない。「米は高市政権が倒れることは望んでいない」からこそ、消費減税は「黙認」されてきたというわけだ。

別の政府関係者は、今回のベセント氏の発言は「高市政権は過度に財政拡張的なことをするなというメッセージだ」と分析した上で、米国がこれまで抱いてきた懸念が明示的になったものだと指摘。「自民党内の財政健全派や野党にとっては、政権を攻撃する材料にもなるだろう」と述べた。同関係者は、高市氏自身にとっても、債務残高対国内総生産(GDP)比を悪化させるような政策は一層取りづらくなったとの見方を示した。

<「より利上げ判断がしやすくなった」>

さらに、ベセント氏の発言が影響を及ぼし得るのが日銀の金融政策だ。ベセント氏はインタビューで、円安是正のため日銀は追加利上げを検討するべきかを問われ、植田和男総裁が「正しい判断を下す」と期待していると回答。直接的な表現は避けつつも、「リフレ政策だった『アベノミクス』はおそらく終わりを迎えたと考えている、と言っておきたい」と、利上げを支持する姿勢をにじませた。

日銀は9月17─18日に次回の金融政策決定会合を迎える。市場は政策金利の引き上げをほぼ織り込みつつあるが、前出の関係者は今回の発言で「植田氏もより利上げ判断がしやすくなった」と指摘。利上げに踏み切らなければ長期金利は一層の上昇が避けられないとの認識を示した上で、「高市氏も植田氏の判断を止めるようなことはしないだろう」と述べた。

ベセント氏は31日に米ノースカロライナ州アッシュビルで開幕する主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の合間に植田氏と会談する予定だ。

<「過度に拡張的な予算編成は想定していない」>

こうした中、政府は2027年度予算編成に向けた作業を本格化させる。7月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では、危機管理投資や成長投資を推進することで62の主要な製品・技術などの分野で40年度までの累計で370兆円を超える官民投資を想定した。

骨太の策定に関する自民党内の議論に参加した政務三役経験者は、ベセント氏の発言が「政策についての対日要求のレベルが更に上がった印象だ」と、ロイターの取材に語った。過度に拡張的な財政政策を懸念するというこれまでの「要求」が、高市氏にしっかりと伝わっていなかったと判断し「表立って強い発言をせざるを得なくなったのではないか」とも推察した。

一方、ある経済官庁幹部は、財政政策の妥当性はあくまで予算の全体像の中で判断するべきだ、と指摘する。高市氏が市場の信認を強調していることなどを念頭に、「そもそも債務残高対GDP比を悪化させるような過度に拡張的な予算編成は想定していない」とも説明した。

高市政権のコメントは現時点で得られていない。予算編成プロセスを担う片山さつき財務相は25日の記者会見で、危機管理投資や成長投資に計上する予算について「成長にしっかりと貢献するもの」、同時に「民間投資の誘発効果があるもの」が当然の条件になると明言。こうした点を精査しつつ歳出改革を進め、経済成長と財政の持続可能性の両立を目指す考えを示している。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:久保信博)

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