Will Dunham
[25日 ロイター] - 米航空宇宙局(NASA)は、次期主力宇宙望遠鏡の打ち上げ準備を進めている。科学者たちはこの望遠鏡を使った調査で、ダークエネルギー(正体不明のエネルギー)やダークマター(暗黒物質)といった宇宙の最大の謎の解明に取り組む。さらに巨大なスケールでの重力の検証や、太陽系外惑星の探索を手がける計画だ。
総額約40億ドルのプロジェクトである「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」の打ち上げは30日、米フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターで予定されている。宇宙関連企業スペースXの大型ロケット「ファルコンヘビー」によって軌道に打ち上げる計画だ。NASA当局者によると、当初予定より9カ月前倒しで打ち上げる。
ローマン宇宙望遠鏡は、1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡と、2021年に打ち上げられたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の後継となる。現在も運用を続けているこれらの先駆的な宇宙望遠鏡によって得られた知見をさらに拡大できる能力を備えている。ローマンは、2018年に93歳で死去したNASA初代主任天文学者、ナンシー・グレース・ローマン氏にちなんで名付けられた。
ローマン宇宙望遠鏡は広大な視野と高速なサーベイ能力を備えており、科学者らは宇宙の構造、組成、進化を調査する広視野観測を通じて、これまでにない方法で宇宙を研究する機会を得ることになる。
<奇妙なもの、希少なもの、そして珍しいもの>
東部メリーランド州のNASAゴダード宇宙飛行センターのローマンプロジェクト担当上級科学者、ジュリー・マケナリー氏は記者団に対して「ローマンの広大な観測範囲により、私たちは奇妙なもの、希少なもの、そして珍しいものを見つけることができるだろう」と期待を込めた。そして「ローマンの主要観測装置は卓越した性能と感度を兼ね備え、広大な空の領域を迅速かつ効率的に観測する能力を持っている」と説明した。
マケナリー氏は、ローマン宇宙望遠鏡を使った主な観測には1年超がかかるとして「この観測の対象には20億個を超える銀河が含まれており、私たちの宇宙の構造、具体的には星、銀河、銀河団がどのように成長し、進化してきたのかを研究することが可能になる。また、宇宙が時間の経過とともにどのように膨張してきたのかを測定することもできる。そして、これらはダークマターやダークエネルギーの根本的な性質、さらには宇宙そのものの構造を解き明かすための鍵となる」と解説した。
宇宙は約138億年前のビッグバンによって誕生し、それ以来膨張を続けている。1998年に科学者らは膨張が実際には加速していることを明らかにし、その原因として「ダークエネルギー」と呼ばれる目に見えない力が仮説として提唱された。
宇宙を構成する要素には、通常の物質である星、惑星、ガス、ちり、そして地球上で馴染みのあるあらゆるものに加え、その物理的性質が依然として不明なダークマターやダークエネルギーが含まれている。通常の物質は、宇宙の構成要素のうち5%に過ぎないのではないかと考えられている。
銀河や星に対する重力の影響を通じ、その存在が知られているダークマターは約27%を、ダークエネルギーは約68%を占めている可能性がある。
ローマンプロジェクトの科学共同研究チームのメンバーであるテキサス大ダラス校の宇宙物理学者ムスタファ・イシャク氏はロイターに対して「重要な疑問点は、ダークエネルギーが単に時間の経過とともに一定である空虚な空間の性質なのか、それとも時間とともに変化するのかという点だ」とし、「ダークエネルギー分光装置(DESI)共同研究による最近の成果では、ダークエネルギーの時間的変化を示唆する興味深い兆候が得られた。観測された加速は、むしろ重力理論の修正が必要であることを示しているのだろうか。こうした疑問に答えることは、現代宇宙論の最も重要な目標の一つだ」と話した。
<アインシュタイン理論>
物理学者アルバート・アインシュタインは1915年、重力を解き明かす一般相対性理論を発表。今もなお基礎的な理論として位置づけられている。
ローマンプロジェクトでは銀河がどのように集積しているかや、重力レンズ効果と呼ばれる現象を通じて物質が光をどのように曲げるかを解明する。
テキサス大ダラス校のイシャク氏は「これらの測定により、アインシュタイン理論が数十億光年のスケールでも有効なのか、あるいは一般相対性理論の修正が必要なのかを検証することができる」とし、「これは物理学での最も根本的な疑問の一つである、宇宙の最大スケールでどのような法則が支配しているのかに答えるものであるため、重要な意味を持つ」と指摘する。
科学者らが地球以外の生命の存在を示す証拠を探し求める中で、これまでに6350個を超える太陽系外惑星が発見されてきた。
ローマンプロジェクトでは太陽系外惑星の探査で、これまでで最大級の包括的な調査も実施予定だ。このため、数千個の新たな太陽系外惑星を発見し、私たちの太陽系に似た惑星系に関する初の統計的調査結果を提供することが期待されている。また、比較的近傍にある一部の太陽系外惑星を直接撮像観測する新技術の実証試験も計画されている。
打ち上げられたロケットから分離したローマン望遠鏡は、地球から約160万キロ程度離れた、月までの距離の約4倍に位置する地点「第2ラグランジュ点」へ向かう。ウェッブ宇宙望遠鏡もこの軌道上に位置している。ハッブル宇宙望遠鏡は地球低軌道にある。
ローマンプロジェクトは5年間の予定だが、NASAによるとローマン望遠鏡にはさらに5年間稼働するのに十分な燃料が残る可能性がある。トランプ米大統領は1期目と2期目の両方でローマンプロジェクトへの資金提供を削減または廃止しようとしたが、議会が予算を維持した。