「長期的な国益を害する」
専門家はどう見ているのか。上智大の前嶋和弘教授(米国政治)は、米政府による赤根氏の制裁対象追加を「米国的な『力による正義』が国際法秩序をも上回るというトランプ大統領の身勝手な判断だ」と指摘する。第二次世界大戦以降も数々の紛争に自国兵士を派遣してきた米にとって、戦争犯罪を裁くICCは不都合な存在だったとし、赤根氏の件は「アメリカ・ファーストが露呈したものであり、大きな禍根を残すものだ」と述べた。
日本政府の対応については、「大変残念だ」で収めるレベルの問題ではないと強調。その上で、例えば赤根氏が使う日本のクレジットカード会社が制裁対象とされたり、日本がICCの最大の分担金拠出国である点などを理由に追加関税を課されたりすることを政府は恐れたのではないか、と分析した。
一方、米が世界の安全保障体制から距離を取る大きな潮流や、トランプ氏が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との会談を模索していることなどを念頭に、「仮に米が北朝鮮の核保有を認めるようなことになれば、日本の安全保障は根本から変わる」とし、「日本政府には、このタイミングで米との関係を悪化させたくないという考えが働いたのではないか」とも話した。
ただ、仮にこうした事情があったとしても、前嶋氏は今回の政府対応が「長期的な国益を害する」と見る。法秩序を重視してきたからこそ、日本は国際的な評価を受けているとし、「過度な米依存からの脱却を目指すミドルパワーの中で日本が存在感を発揮するためにも、短期的な実利ではなく、長期的な国益を追求するべきだ」と語った。

曖昧すぎる目標、敵国の軽視、自国軍事力への過信……長期化・泥沼化したベトナム戦争との共通点