Mariko Sakaguchi

[東京 21日 ロイター] - 円債市場で、長期金利3%を巡る攻防が続きそうだ。足元では世界的な金利上昇が一服、30年ぶりの高水準を付けた長期金利も低下しているが、インフレ懸念を背景に日銀のターミナルレート(利上げ最終到達点)予想が高止まっており、くすぶり続ける財政懸念と併せて、この先も不安定な動きが見込まれている。

<金利上昇局面は終わらず>

米財務省が19日に長期・超長期債の買い入れ消却(バイバック)を倍増する流動性支援策を発表、「債券を発行する側の政府が(金利上昇に対して)明示的な意図を示したことが好感された」(ニッセイ基礎研究所の金融調査室長、福本勇樹氏)と市場では受け止められた。米10年債利回りや30年債利回りが低下に転じ、世界的なイールドカーブのベアスティープ化の流れに歯止めがかかった。

18日に一時2.945%と30年ぶりの高水準を付けた新発10年債利回り(長期金利)も足元で2.8%台まで低下。中期・超長期ゾーンの金利上昇圧力も一服した。週内の5年債・20年債入札がいずれも無難に消化されたこともサポート要因となり、長期・超長期ゾーンを中心に大きく金利が低下した。

ただ米国のバイバックは「根本的な解決にはならない」(ニッセイ基礎研の福本氏)との見方もあり、市場では足元の動きは「一時的なあや戻しに過ぎない」(国内証券債券セールス担当)とみられている。日本でも米国のバイバックと同様の施策がとられるとの連想も働きやすいが、「(バイバック実施は)相応にハードルが高い印象だ。昨年から議論されている観測はあるものの、進展はみられていない」(同)との声もある。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、鶴田啓介氏は、目先は長期金利の3%到達が遠のいたものの、債券に強気になれる材料は乏しいとみており「金利の上昇局面は終わっていない」との見方を示す。

<プレミアムが乗るターミナルレート>

足元では再び中東情勢の先行き不透明感から、エネルギー価格上昇に伴うインフレの長期化が意識される。高市早苗政権による「責任ある積極財政」の方向性も変わっていない。7月末に日米協調介入が実施され、日銀による早期利上げ観測が広がったにもかかわらず、外為市場ではドル/円が大きく円高に振れなかったことも投資家心理の重しになる。

ある国内銀行の運用担当者は、金利先高観が広がる中では「利回り水準だけで国債を買っていくという局面ではない」と述べる。

ロンドン証券取引所グループ・リフィニティブのデータによると、市場が予想するターミナルレートの指標となるオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)の2年先1年物フォワード金利は、2%付近での推移が続いていたが、18日に一時2.3%付近に水準を切り上げた。20日時点では2.26%付近で高止まっている。

ニッセイ基礎研の福本氏は、ターミナルレートの上振れについて、日銀が緩やかに金融緩和を正常化するとの織り込みだけではないとみる。「為替が円高に振れるレベルまで政策金利が上がるかもしれないというプレミアムが乗っている状況だ」とし、結果として投資家の買い手控えにもつながり、イールドカーブはフラットニング圧力がかかりにくい状況だと指摘する。

<概算要求に高い関心、根強い財政懸念>

野村証券のエクゼクティブ金利ストラテジスト、岩下真理氏は「長期金利が3.3%付近まで上昇しても驚きはない」と話す。要因として、外為市場の円安地合いや、今秋から年末にかけての財政政策への警戒感、物価のピークアウトが見え始める来年春までくすぶり続けるインフレ懸念の3点を挙げる。

月末が期限となる来年度予算の概算要求は、高市政権が成長分野や危機管理投資で要求額の上限を撤廃したことに加えて、防衛費がどの程度になるかなど、市場の関心は高い。

財政政策の規模が大きくなるほど、インフレ増長への懸念が生じやすく、インフレ抑制に向けた日銀の利上げ継続への思惑が金利上昇圧力につながる構図だ。

9月の国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)会合では、金利上昇への警戒感を背景に、年度内の国債発行量の減額が議論されるのではないかとの観測も出始めている。ただ「一時的ではなく、中期的に国債発行量を減らすという形でなければ、意味がない」(国内銀の運用担当者)との声もある。

今年1月にベセント米財務長官が日本発の金利上昇への警戒感を示したことなどを踏まえると「(米国は)高市政権による積極財政政策と日銀への関与度の高さを懸念しているとみられ、その部分が変わることが望まれているのではないか」と野村証の岩下氏は話している。

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