Balazs Koranyi

[フランクフルト 10日 ロイター] - 欧州のうだるような熱波は、いまだに気候変動が後の世代の問題だと考えていた一部の人々にとって、生活を一変させる経済的影響が既に現実のものとなっていることを突き付けた。

今夏の記録的な高温と干ばつは、発電や河川輸送、公衆衛生システムに大きな混乱をもたらしている。また、今年の山火事シーズンは欧州史上最悪の規模となる見通しだ。

エコノミストや研究者らは、こうした欧州経済への打撃は既に数千億ユーロ規模に達していると推計している。コストは気温上昇以上のペースで増加する見通しで、これは始まりに過ぎないと警告する。

欧州では他のどの大陸よりも急速に気候が変化しており、その被害は既に各国の財政を圧迫している。さらに、インフレの大きな変動を引き起こし、観光地図を書き換え、電力生産や物流の在り方の見直しを迫っている。

<熱波による経済被害、過去最大に>

エコノミストらによると、6月と7月には気温が過去最高を更新し、経済損失はこれまでの記録を上回る可能性が高い。

主要な貨物輸送路であるライン川とドナウ川では、水位低下のため船舶の航行が大幅に制限されている。また、冷却が困難になったことから原子力発電所の原子炉6基以上が停止、あるいは出力を抑制している。トウモロコシやヒマワリなど収穫時期の遅い作物では、7月時点で既に収穫量が6─7%減少しており、農業生産見通しも下方修正された。

高温は労働生産性も低下させ、これまでに数万人の命を奪っている。ドイツだけでも熱波関連の死者が1万人以上に上った。

また、消火活動や電力使用制限といった緊急対応のコストが、財政への圧力をさらに強めている。

<南欧、観光収入減とインフレ加速に直面>

気温上昇が最も大きい南欧は最大の打撃を受ける可能性がある。観光収入の減少や農作物の不作の深刻化に加え、人口流出も招く恐れがあるためだ。

欧州の大手銀行INGのエコノミスト、カルステン・ブジェスキ氏は「45度の暑さの中で南イタリアやスペインを歩き回る観光客を想像できるだろうか。私はできない。観光の形態は変わるだろう」と語った。

ブジェスキ氏は、南欧では年間を通じた観光客は増える可能性がある一方、夏場のピーク需要は減少し、旅行者が北へ移ることで南欧の観光・宿泊業界に打撃を与えると指摘する。

また南欧では、異常気象による食料価格への影響もより大きくなりそうだ。これは、既にインフレ率を目標水準に抑えることに苦慮している欧州中央銀行(ECB)の仕事をさらに難しくする可能性がある。

バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターの研究者、マクシミリアン・コッツ氏は「極端な高温による食料価格への影響は、もともと気温が高い地域ほど大きい。南欧ではその影響がより強く表れる」と述べた。

コッツ氏の推計によると、2022年の異常高温は食料価格上昇を通じてユーロ圏のインフレ率を0.34パーセントポイント押し上げ、南欧が不均衡に大きな打撃を受けた。

一方、河川輸送の停止によって欧州の一部地域への燃料の輸送も困難になり、地域間の価格差が拡大している。

<財政負担増でECBにも圧力>

独保険大手アリアンツはリポートで、「財政面での影響は、それを吸収する能力が最も低い国・地域の経済に重くのしかかる」と指摘した。

生産減少に伴う年間税収の落ち込みは、フランスで最大1.8%、イタリアとスペインで最大1.3%に達する可能性があるという。累進課税制度の下では、税収の落ち込みが生産の落ち込みを上回るためだ。

企業の利益率も低下し、投資を抑制して経済損失をさらに拡大させる見通しだ。

一方、コストは急増している。政府は緊急対応費用を負担しなければならないほか、将来の気候変動に耐え得る発電設備や輸送インフラへの投資も必要になる。

シンクタンク、ブリューゲルの上級研究員ヘザー・グラッベ氏は「大きな懸念は、多くの国が依然として場当たり的な緊急対応に過度に依存していることだ。それは費用がかさむうえ、しばしば非効率だ」と語った。

ただ、政府が支出拡大を試みれば、投資家の反発を招く可能性もある。特にフランスやイタリアでは債務残高が既に高水準にあり、各国は防衛やグリーンエネルギー移行への投資も迫られている。

こうしたジレンマはECBを巻き込む可能性がある。ECBは過去10年間、インフレ率が低すぎた時期に借り入れコストを抑えるため、各国の国債を数兆ユーロ規模で購入してきた。

ブジェスキ氏は「支出需要がこれほど多ければ、政府債務は増加方向に向かうだろう」と指摘。「そして、債券市場で突然の売りが発生した場合、ECBに追加の量的緩和を求める圧力が高まることになる」と述べた。

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