Jamie McGeever
[オーランド(米フロリダ州) 13日 ロイター] - 経済的・政治的な要因が相まって世界中の投資家、とりわけ中央銀行からの需要が刺激され、金価格が再び上昇している。
数週間にわたって1オンス当たり4000ドル前後で横ばい状態が続いていた金価格が今月上旬以降、約400ドル、すなわち約10%上昇した。この勢いだと、8月の月間上昇率が今世紀に入ってから最大になる可能性がある。
月間上昇率が13%以上になったのは、直近では1999年9月だった。
この急騰は、米国に関連したいくつかの大きな要因がある。具体的には、米連邦準備理事会(FRB)による政策金利の「ハト派的な据え置き」、雇用に関する統計が軟調なこと、そして比較的穏やかなインフレ率だ。これらはいずれも、FRBの利上げ予想を和らげ、外国為替市場でのドル下落を招いた。金価格にとって、まさに天の恵みだ。
しかし、これらの背景にはより大きな不安をあおっている地政学的・政策的な状況がある。それが世界に対し、特に外貨準備の運用担当者にとって金が持つ根本的な魅力を改めて想起させている。
米国とイランの対立が再び激化しており、たとえその内容が不満足なものであったとしても和平「合意」への期待が消えつつある。11月の中間選挙を控えたトランプ米大統領の逃げ道は狭まりつつある。対立の激化、または屈服だけがトランプ氏の直面する選択肢ではないものの、アナリストの一部は今やこうした白黒はっきりしたシナリオを想定し始めている。
一方、FRBの独立性や、ウォーシュFRB議長のインフレ対策への信頼性には疑念が強まっている。ウォーシュ氏が、FRBが目標とする2%のインフレ目標について言及しても投資家は感銘を受けなかった。
メディアの報道によると、トランプ氏はウォーシュ氏を指名して以来、同氏に繰り返し電話をかけるとともに、リサ・クックFRB理事の解任に向けた動きを再開している。
こうした一連の動きが債券市場を動揺させている。指標となる米国債10年物の利回りは、1年半ぶりの高水準まで上昇した。30年物国債利回り、30年物の物価連動国債利回りは、それぞれ2007年以来、08年以来の高水準を付けた。
外国の中央銀行各行が、ニューヨーク地区連銀に預託している米国債保有高の削減を続けているのも不思議ではない。外国中銀の米国債保有高は12年以来の低水準となっている。
エコノミストのフィル・サトル氏は先週、「米国は現在、世界の基軸通貨を供給することによる国際的な通貨発行益が枯渇した段階にある。既に始まっている可能性もある次の段階は、米国の負債を抱える海外の公的機関が、それを保有することについてより不安を募らせるようになった時に何が起こるかということだ」と記した。
<もはや安全資産ではないのか>
それらの出来事はいずれも、単独では必ずしも金価格の大幅な回復を招くとは限らない。しかし、それらを全て合わせると、かなり説得力のある要因のリストとなる。特に2026年第1・四半期(1―3月期)の金価格低迷を経て、第2・四半期に金の買い入れを拡大し始めていた中銀にとってはなおさらだ。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、第2・四半期の中銀による金の純購入量は計289トンと第2・四半期として過去最高になり、前四半期の5倍超の規模だ。
ドイツ銀行のアナリストらは、金の平均価格を考慮すると第2・四半期の中銀による金購入額が過去最高の450億ドルに達したと推計している。
この記録は間もなく更新される可能性がある。WGCが中銀に対して6月に実施した調査で、12カ月以内に金保有量を増やす計画だと回答した中央銀行の割合は45%と過去最高になった。
中銀による第2・四半期の序盤での金購入量も、この傾向を裏付けているようだ。中国人民銀行(中銀)は7月に前月比0.9%増の20トンの金を買い入れ、増加率は23年10月以来、2年9カ月ぶりの大きさとなった。中国の金準備高は2377.5トンと、過去最高になった。
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNY)のアナリストらは先週、「中国は金準備高を再び大幅に増やしている。金はFRBの純粋なシグナルというわけではないが、公的部門による持続的な需要と投資家の関心の再燃がインフレ、通貨、地政学的リスクに対するヘッジとしての価値を高めている」と指摘した。
しかしながら、中銀の動きは緩慢であり、金地金への関心が再び高まっているという明確な兆候が現れるには数カ月を要するだろう。また、そのような動きは一方通行にはならないだろう。最も保守的で、価格変動に左右されにくく、投資期間が最も長い買い手である中銀にとっても、この数年間に前例がないほど価格が変動した金は、かつて長い間考えられてきたような究極の安全資産ではなくなっている。
国際通貨基金(IMF)が7月に発表した報告書は、金について「変動が極めて大きく、ヘッジや分散投資の効果は限定的」だとして流動性確保を目的として購入すべきではないと指摘。その上で「中銀は金をリスクが高い準備資産として扱い、金の積み増しに関する決定は、戦略的な資産配分と健全な政策分析に基づいて実施すべきだ」と訴えた。
中銀がひたすら金価格上昇に追随する可能性は低い。しかし、世界の準備資産に対する信頼が揺らぐ中で、金の輝かしい魅力が薄れることはなさそうだ。