[東京 14日 ロイター] - 日銀が9月17、18日の金融政策決定会合での利上げを視野に入れる背景には、上振れ含みの物価動向がある。7月30、31日の決定会合では、一部の審議委員からインフレ対応への遅れを避けるため、利上げペースを速めるべきとの意見があった。利上げの遅れに伴うインフレリスクが金利先高観につながってきた側面もあり、実際に利上げペースを速めた場合の長期金利の反応が焦点となる。
「物価上振れリスクに対して敏感にならざるを得ない」ーー。日銀が重視する基調インフレ率が2%に近づく現状に対し、日銀内ではこうした声が出始めた。
日銀が13日発表した7月の企業物価指数(CGPI)速報では、国内企業物価指数が前年比7.2%上昇。「非鉄金属」や「石油・石炭製品」などが押し上げに寄与し、物価上昇圧力が根強い現状を浮き彫りにした。
日銀は、利上げの時期やペースを左右する要因の一つに「AI(人工知能)関連需要」も挙げている。今回の物価統計では、半導体メモリなどにAI関連需要の高まりの影響が確認され、市場では「9月の利上げを後押しする材料」(国内証券)との受け止めが複数出ている。
夏場の飲食料品の値上げも予想され、消費者物価の先高観も強い。約28年ぶりとなる日米両政府による「円買い介入」が功を奏し、為替円安は一服したものの、数カ月のタイムラグを伴うとされる円安に起因する物価上昇圧力は依然として残っており、インフレ高進に対する日銀内の警戒度合いもギアが一段上がった状況だ。
日銀は7月30、31日の金融政策決定会合では、政策金利を1.0%に据え置いた。ただ、10日公表の7月会合の「主な意見」によると、物価がさらに上振れするリスクに警戒が必要として利上げペースの加速や局面変化に言及する意見が相次いだ。累次の利上げにもかかわらず、金融環境がなお緩和的な現状への危機感がにじむ。
2024年3月にマイナス金利政策を解除して以降、日銀はおおむね年2回のペースで利上げを実施してきた。6月15、16日の決定会合では政策金利を1.0%とし、1995年以来31年ぶりの水準へと引き上げた。
これまで日銀は、政策金利が中立金利とみられる水準に近づくにつれ、過去の利上げが経済に与える影響を注意深く見極めながら慎重に利上げを進めてきた。3カ月ぶりとなる今回の利上げ判断は、今後の利上げペースの前倒しを意味する。
今年に入ってからは世界的な金利上昇に見舞われ、日本の長期金利は7月に2.9%と、約30年ぶりの水準に上昇する場面があった。物価高進への対応が遅れをとる「ビハインド・ザ・カーブ」への懸念が、金利水準を切り上げてきた側面もあり、利上げペースの加速が市場の金利観にどう作用するかが注目される。
舵取りを誤れば市場の金利観がさらに上向き、かえって高市早苗政権の政策余力を狭めるリスクをはらむ。