45歳だった2010年に早稲田大学人間科学部(通信)に入り、芸能活動と並行して研究者としての道を歩み始めた、いとうまい子。予防医学、ロボット工学、抗老化と分野を少しずつ変えながらも「健康寿命を延ばすこと」を一つの軸に研究を続けている。

自身の介護経験も生かしつつ、健康に長生きすることの大切さを発信している彼女に自宅介護や施設・病院での経験、研究生活などについて本誌・大橋希が話を聞いた。

──研究者の道に進むきっかけは?

18歳で歌手デビューをして5年で事務所を辞めて、そこからなかなか思うようにいかない「地獄」の10年ぐらいを過ごしました。それでもお仕事を頂くことはあり、「多くの方に支えられている。ありがたいし、いつか恩返しがしたい」と考えていました。

そんななか、仕事を通して予防医学の大切さを知る機会があり、これを伝えていくのが私にできる恩返しかもしれない、大学で予防医学を学ぼうと思い立ったんです。

──3年に進級する前、師事しようと思っていた予防医学の教授が退官してしまい、ロボット工学のゼミに進路変更。博士課程では、基礎老化学で健康寿命延伸のための「カロリー制限模倣物」の研究をされました。

出会いもあってどんどん研究分野は変わっていっていますが、人が幸せに健康寿命を延ばし、寝たきりにならないためにどうしたらいいかを考えることを軸に学び続けています。

3年生で入ったロボット工学のゼミでは、学生でいらした現役の整形外科の先生から高齢者のロコモティブシンドローム(運動器症候群)の問題について初めて聞いたんです。

その後、父が癌で入院し、あれよあれよという間に筋力が弱って動けなくなってしまった。ロコモは超高齢社会で大きな社会問題になると概念では分かっていました、実際に身内がそうなっていく姿を見せつけられて……。ロコモ対策のことを本気で意識するようになり、予防のためのロボット開発にいっそう真剣に取り組みました。

父は余命2年と宣告されていましたが、その通りに逝ってしまいました。

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