Nandita Bose

[ワシントン 8日 ロイター] - 米連邦議会下院で多数派奪還を目指す野党民主党は、トランプ大統領に対する即時の弾劾手続きではなく、同氏を取り巻く企業や金融機関を対象とした幅広い調査戦略を検討している。協議内容を知る関係者4人が明らかにした。

関係者の話では、民主党の下院幹部や委員会スタッフは、公聴会や召喚状、資料提出要求を活用し、トランプ氏の政治的・事業的な関係先に関する記録の入手を狙っている。民主党内では、監視を拒むとみられるホワイトハウスと直接対決するよりも、民間企業や金融プレーヤーを調査対象とする方が成果を得やすいとの見方が出ているという。

こうした方針の裏には民主党の慎重姿勢に加え、第1次トランプ政権時代の経験がある。当時の弾劾手続きは議会の時間と労力を大きく費やした一方で、トランプ氏に「党派的攻撃の被害者」として振る舞う機会を与えた、というのが多くの民主党関係者の認識だ。

民主党関係者によると、同党は11月の中間選挙で下院多数派を奪還した場合、議会の調査権限を利用して政権の意思決定過程を精査し、トランプ氏が自身や側近、支援者の利益のために権力を利用したかどうかを調べる構え。民主党幹部補佐官の1人は「われわれは最初から弾劾を志向しているわけではない。初日から失敗する採決を望む者はいない。まずは調査を通じて証拠を積み上げ、トランプ氏の責任を追及することに重点を置いている」と語った。

現在、与党共和党は下院で僅差の多数派を維持しているが、世論調査では民主党が11月の選挙で多数派を奪還する可能性が示されている。多数派になれば、民主党は召喚状の発行や証言・資料提出の強制、公聴会の開催、議会侮辱手続きなどを行う権限を得る。

関係者は、民主党はホワイトハウスが関連文書や資料提出要求に抵抗または応じない可能性が高いとみており、政府と取引関係を持つ企業や請負業者、金融機関の側からの情報収集を重視している、と説明した。

また関係者3人への取材に基づくと、IT大手のアップルやグーグル親会社アルファベット、データ解析大手パランティア、資産運用大手ブラックストーン、大手投資会社ブラックロック、さらに実業家イーロン・マスク氏が所有する電気自動車(EV)大手テスラなどの企業が、政府契約や規制面での関係、政権との取引を理由に調査対象候補として議論に上っている。ただ最終的な対象企業のリストは決まっておらず、正式な調査も始まっていないという。

ロイターはこれら企業に不正行為の疑惑があるかどうかを確認できなかった。

アルファベット、パランティア、ブラックストーン、ブラックロックはコメントを拒否。アップルとテスラからは回答がなかった。

関係者が明かしたところでは、民主党は国土安全保障省の契約案件、トランプ氏が計画するホワイトハウスの宴会場建設資金、企業献金、便宜供与疑惑などについて調査を検討している。トランプ氏と関係のある金融法人、長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏がパートナーを務めるベンチャーキャピタル「1789キャピタル」、さらにはトランプ家関連事業への投資を行う外国政府系ファンドについても調査対象となる可能性がある。

外国政府系ファンドへの直接的な調査は難しい可能性があるため、民主党はトランプ家関連の米国内企業やファンド、その他の仲介者から記録を取得する方法を検討しているとされる。

<調査に向けた地ならし>

関係者2人は、民主党が既に調査に向けた地ならしを始めていると述べた。

党幹部らは、将来的な調査対象となる可能性のある企業や請負業者、団体などに対し書簡を送付しており、これらの書簡は資料提出を求めるとともに、民主党が下院多数派を奪還した場合の召喚状発行に備える狙いがある。

下院監視委員会の民主党トップ、ロバート・ガルシア議員と、司法委員会の民主党トップ、ジェイミー・ラスキン議員は、多数派を獲得した場合に既存の調査を拡大する考えを示した。

ガルシア氏は「大統領の息子たちを利する不透明な国防総省契約、トランプ氏の暗号資産事業による巨額利益、支持者向けの不透明な取引などについて、民主党が下院を奪還した際には腐敗との戦いを徹底する」と明言した。

関係者によると、送付された書簡には、メディア企業パラマウント・スカイダンスとトランプ政権との関係や、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーとの取引計画に関する情報要求が含まれている。アルファベット傘下の動画共有サイト「ユーチューブ」とアルファベットに対して要請しているのは、2025年9月にトランプ氏との間で成立した2450万ドルの和解についての説明だ。

資源商社ビトルやトラフィギュラに対しては、ベネズエラ産原油販売に関する情報提供を要請したという。

アルファベットとトラフィギュラはコメントを拒否した。他の企業からは回答が得られなかった。

<弾劾最優先ではない>

下院民主党トップのハキーム・ジェフリーズ院内総務は6月、NBCテレビの番組「ミート・ザ・プレス」で、民主党が下院多数派を奪還した場合でも、トランプ氏の弾劾を排除しているわけではないとしつつ、主要な関心は国民生活に関わる問題だと述べていた。

今回の調査計画に関わる民主党関係者の話では、調査の結果、弾劾に値する行為を示す証拠が見つかった場合には弾劾に踏み切る可能性はあるものの、それを最初の行動とする考えはない。

こうした判断の背景には、第1次トランプ政権時代にトランプ氏が下院で史上初めて2度弾劾訴追された大統領となったが、いずれも上院で無罪評決を受けた経緯がある。

民主党幹部補佐官は「調査によって弾劾に値する証拠が見つかれば、ためらうことなく行動する。しかしまずは事実関係を明らかにすることが先決だ」と語った。

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