Danielle Kaye
[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米コロラド州デンバー在住の破産専門弁護士であるノラ・ナイさん(58)は、糖尿病治療薬「マンジャロ」で体重を80ポンド(約36キロ)減らし、30年以上ぶりにワードローブを一新するところだ。今年初め、百貨店メーシーズを訪れ、何を選べばいいかわからず途方に暮れたという。
糖尿病と診断された後、1年7カ月前に薬の服用を始めたナイさんは「小売業者は、小さいサイズを着られるようになった人々が押し寄せることに備える必要がある。私たちはどこで買えばいいのかわからず、手助けを必要としている」と語った。
ギャラップの調査によると、米国人の約11%がGLP-1受容体作動薬を使用している。買い物客らはロイターに対し、体形の変化を受け、新しい体に合うデザインを探すため、実店舗で試着したいとの意向を示した。
小売業者の返品管理を支援するリターンプロが500人を対象に実施した調査によると、GLP-1薬の使用者の3分の2以上が、サイズの変化を受けて実店舗で買い物をする意向が強まったと回答した。
アナリストらによると、こうした動きは、小売業者に新たな課題を生む一方、従来からの課題も改めて突き付けている。減量した顧客の期待に応えるため、実店舗戦略の見直しが求められている。
コンサルティング会社EYパルテノンの消費者戦略担当、ドン・ジョンソン氏は「少なくとも、買い物が完全にオンラインへ移行する流れを鈍らせる可能性があり、実店舗での顧客体験について、より慎重に考える必要がある」と述べた。
ウエディングファッション企業デービッド・ブライダルのケリー・クック最高経営責任者(CEO)は、減量薬が同社の約200店舗での買い物の仕方に影響を与えていると述べた。クック氏によると、過去6カ月間で買い物客が試着するドレスの数は平均で2倍に増え、時には10種類ものデザインを試着することもあるという。
コンサルティング大手PwCの消費者市場業界担当のリーダー、アリ・ファーマン氏によると、減量薬の影響で、百貨店、ディスカウントチェーン、ブティックは取り扱うサイズ、試着室の構成、スタイリングサービスを見直している。同氏は、こうした実店舗への投資が今後1年以内に実施される可能性が高いと述べた。
ディスカウント小売り業者のロス・ストアーズは、第1・四半期の既存店売上高が17%増加したと発表した。ロスのジム・コンロイ最高経営責任者(CEO)は5月、この増加について、来店客数の増加と「実店舗での体験の改善」によるものだと説明。ただ、減量薬には具体的に言及しなかった。ロスはコメント要請に応じず、メーシーズはコメントを控えた。
<サイズ探し>
テキサス州オースティンでオンラインプラットフォーム「Whatnot」などを通じて衣料品を販売するアンバー・ボルキンさん(43)は、減量のさまざまな段階で買い物に苦労している顧客を支援するため、プライベートのスタイリングのアドバイスを始めた。
小売業界で25年働き、自身もGLP-1薬を服用しているボルキンさんは「私には顧客からの信頼があった。今の実店舗には、それが欠けていると思う」と述べた。「客に店舗へ戻ってもらい、高い価格を支払う理由を示したいなら、それに見合うサービスを提供する必要がある」とも語った。
ボルキンさんによると、過去2年間に事業を利用した数百人の顧客のうち、およそ4分の3がGLP-1薬による減量について言及したという。
小売業者がサイズ選びの問題に対処しようとする中で、人工知能(AI)ツールが活用され始めている。例えば、ビクトリアズ・シークレットは、試着室の一部にAI技術を導入し、顧客が異なるサイズをリクエストできるようにした。同社はコメントを控えた。
前出のリターンプロでマーケティングを率いるアミ・デウィル氏は、店舗はより個別化されたサービスへの需要に対応しなければならないと述べた。「それはAIかもしれないし、サイズ選びに非常に長けた店員かもしれない」
<体重安定後に高額品も>
GLP-1薬の使用者は体重が安定すると、より高額な衣料品を購入する可能性が高まる。リターンプロの調査では、GLP-1薬の利用者の中でも、高価格帯の商品を購入する層の91%が「実店舗で買い物をする可能性が高まった」と回答。GLP-1薬の利用者全体では、その割合は69%だった。
ウェンディ・フォッサムさんとジョン・ホワイトさんは、薬でそれぞれ60ポンドと120ポンド減量した。ともに41歳の夫婦は、ミネアポリスの店舗で手頃な価格の服を探している。
法律事務所の司書であるフォッサムさんは、体重が落ち着いたら、ワードローブを作り直すため、メーシーズや地元のブティックで買い物を増やすつもりだと述べ、「今後は対面でのショッピングを増やすと思う」と語った。
体重が落ち着いてきたホワイトさんは、夫婦の記念日の旅行であるラスベガス行きに向けて、実店舗で新しいスーツを購入しようと考えているという。薬のおかげで、「服を買う場所の選択肢が広がった」と語った。