Michael S. Derby
[6日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)当局者の間で、人工知能(AI)分野の拡大を支える過熱気味の投資が行き過ぎて、金融システムにリスクをもたらす恐れがないかどうかについて評価検討が始まっている。
この問題を取り上げた当局者らは現時点でも警戒する必要があると呼びかけつつも、約20年前の住宅バブル崩壊や、その前のITバブル崩壊のような金融危機に直結する可能性はなお低いとの見方を示している。ただ投資規模の大きさや、実績が十分に確認されていない技術に対する収益見通しの不透明さ、複雑な資金調達手法の拡大、債務利用の増加などを受け、AI関連の金融行動が中央銀行の監視対象になろうとしている構図が透けて見える。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁はロイターのインタビューで「バブルのような状況とはみていない」と述べた。
ウィリアムズ氏は「新技術やAIを巡り、非常に高い期待と熱狂が見られる。投資家はAIの恩恵がどの程度大きなものになるのかという、ほとんど解くことができない問題にリアルタイムで答えを見いだそうとしている」と語り、その過程で市場の変動は高まるだろうと付け加えた。
その上で、AI投資を支える借り入れは増加しているものの、高い収益力を持つ企業が資金調達を行っているとして「現時点ではレバレッジによる金融安定上のリスクをそれほど懸念していない」と発言した。
資産運用会社アポロのチーフエコノミスト、トーステン・スロック氏は調査メモで「データセンター建設ブームの規模は、2005年に国内総生産(GDP)比6.6%でピークに達した住宅ブームの半分以下にとどまる」と指摘した一方で、GDPに対する投資の伸び率は、世界金融危機前の住宅投資を上回るペースで拡大していると説明している。
FRB内にはウィリアムズ氏ほどAI関連リスクに楽観的ではない当局者もいる。
カンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁は4日の講演で、業界の資金調達の在り方を踏まえて「マクロ経済の観点から、この業界が『大き過ぎてつぶせない』存在になりつつあるのではないかという議論を本格的に始める兆候がある」と述べた。特に懸念しているのは、資金の流れや相互の結び付きが問題発生時にリスクの波及経路になり得る事態だ。
シュミッド氏は「データセンター、エネルギー供給事業者、そしてその地域社会に対する契約上の約束が循環構造を形成しているが、その輪が過度なレバレッジを抱えていないか。もし火種が生じた場合、何が起きるのか」と警鐘を鳴らした。
サンフランシスコ地区連銀のデーリー総裁も5日に「投資額と成長率だけを見れば、AI分野への投資は非常に懸念される水準に見える」と語った。ただAI分野で発表されている多くの投資計画はまだ実際の設備として完成しておらず、事業環境悪化後の処理が難しい「座礁資産」が大量に発生するリスクは抑えられているとの認識も示した。
さらに、成長を支える借り入れの増加は今後の課題になり得ると指摘。FRBとしては「金融危機で起きた事象を見張るのではなく、何が問題となって状況を悪化させる可能性があるのかを把握するための監視指標を整備することが重要だ」と強調した。