Claire Fu Kevin Yao Liangping Gao

[シンガポール/北京 3日 ロイター] - 中国は消費よりも先端産業を重視する自国の経済モデルを積極的に正当化している。こうした姿勢は、欧州や米国との重要な貿易協議を控える中で中国の自信が高まっていることを示している、というのが専門家の見方だ。

習近平国家主席とトランプ米大統領は年内に複数回の直接会談を行う予定。一方で欧州連合(EU)は、中国との対立案件の解決期限として10月を設定している。背景には、中国の貿易黒字が年間1兆ドルを超える規模に膨らんでいる事態への懸念がある。

欧米諸国は、中国の経済政策を重商主義的で国際的な貿易ルールに反すると批判している。家計よりも生産者を優先する政策によって、中国から安価な製品が世界市場へ流入し、より均衡の取れた成長を目指す各国の産業基盤を弱体化させているというのがその根拠だ。

しかし7月30日に中国共産党指導部が開いた会合は、政策の継続方針を示した。発表では、限定的かつ重点的な支援策を打ち出したものの、中国の貿易相手国や多くのエコノミストが長年求めてきたような消費主導の大規模景気刺激策や構造改革には踏み込まなかった。

その数日前に中国商務省は「いわゆる産業の過剰生産能力」に関する見解文書を公表し、欧米諸国の批判は保護主義的だと反論した。同文書は、過剰生産能力という概念自体が「論理的欠陥」と「隠された意図」に基づくものだと一蹴している。

中国共産党の機関誌「求是」も7月、中国の消費水準が低いことについて、投資主導によるキャッチアップ型発展モデルの結果であって「歴史的に正当化される」と言い切った。

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)のシニアエコノミスト、シュー・ティアンチェン氏は、こうした発信は「中国は決して路線変更しない」と西側に直接宣言するものではないとしながらも、2つのメッセージを含んでいると指摘。「1つ目は中国の立場や背景を理解してほしいということ。相互理解が深まれば、交渉の助けになる。2つ目は中国として譲れない一線を示していることだ」と語る。

さらに同氏は「商務省の文書は、中国が自国企業や製品に対する差別的措置を受け入れないという姿勢を明確に示した」と述べた。

<中国ショック2.0払拭へ>

中国側は、自国の経済モデルは依然として先進国への追い上げ段階にある国のニーズを反映していると訴えている。中国製品は安価なだけでなく品質も向上しており、科学技術や研究開発への投資は世界全体に利益をもたらすという立場だ。

李強首相が反論するのは「中国ショック2.0」への警戒論。これは中国企業が先端製造業分野で欧米企業を圧迫するというシナリオを指す言葉だが、李氏はむしろ世界経済にとっての「中国オポチュニティー(機会)2.0」だと位置付けた。

しかしコーネル大学で通商政策を研究し、かつて国際通貨基金(IMF)で中国担当責任者を務めたエスワール・プラサド教授は、こうした説明は中国製品の流入を受ける国々では説得力を欠いていると主張。「中国は国内需要が弱いため、成長を支える手段として輸出への依存度が高まっている。その状況では、中国の輸出が世界中の消費者への贈り物だと主張するのは難しい」と語った。

米国は昨年、中国への圧力を強めるため100%を超える高関税を導入した。だが中国はレアアース(希土類)生産で圧倒的な地位を持つ強みを活用し、さまざまな産業に不可欠な供給網を武器として戦略的主導権を取り戻した。

EUも独自の産業政策や域内調達政策を通じて市場防衛を進めている。昨年EUの対中貿易赤字は1日平均で約10億ドルに達し、直近ではドイツのメルツ首相が、中国は人民元を過小評価した状態に維持していると批判した。

それでも中国側の最近の発信からは、大幅な譲歩を行わなくても貿易摩擦を和らげられるとの自信がうかがえる。ナティクシスのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレーロ氏は「米国との関税問題への対応は、中国にとって一種の成功例となったようだ。現在、中国は欧州に対しても同様に、時間を稼ぎながら交渉を進める戦略を採っている」と分析する。

エレーロはさらに「中国の経済モデルを巡る発信は、1-2年前と比べて自信に満ち、より統制の取れたものになっている」との見方を示した。

<急激な改革にためらい>

確かに中国の投資は今年に入って減速し、特に地方政府支出への監視が強化されている。多くのエコノミストは、製造業やインフラ分野での過剰生産能力を生み出してきた要因だとみているのが地方政府主導の投資だ。

中国当局も公には需要と供給の「矛盾」を認め、企業が利益を犠牲にして市場シェアを奪い合うデフレ的な価格競争を終わらせると約束している。また当局は消費需要の拡大もたびたび表明しているが、大規模な構造改革の計画は示していない。

「求是」は「歴史的に正当化されることは、長期的にも正当化されることを意味しない」と強調して中国の低消費体質について「モデル転換は必要だ」と認めた。

専門家の話では、中国は経済の不均衡を認識している。それでも急激な改革による混乱を恐れ、慎重に移行を進めようとしている。

もっとも近年では、中国の政策が世界経済だけでなく、中国自身にもリスクをもたらしていると警告する研究報告が相次ぐ。経済協力開発機構(OECD)は最近の報告書で、中国企業のおよそ60%について「市場シェア拡大の要因は受け取った補助金で説明できる」と指摘した。イタリア銀行(中央銀行)の研究では、中国の輸出拡大の約75%は、低迷する消費需要や過剰生産能力といった国内要因によって引き起こされたと推計されている。

マッキンゼー・グローバル研究所の報告書に基づくと、中国は毎年、欧州と米国を合わせた量の約3倍に相当する生産資産を新たに積み上げている一方で、その投資収益率は欧米より約40%低いという。

調査会社ロジウム・グループ共同創業者のダニエル・ローゼン氏は「中国側の主張が以前より頻繁かつ公式な形で発信されるようになったのは、中国国内の構造的な経済問題が世界に波及しているという証拠が、それ以上のスピードで積み上がっているためだ」と述べた。

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