一方、フライバイは、衝突しないギリギリの距離まで探査機が小惑星に接近する必要があり、非常に高い軌道誘導精度が求められた。小惑星は惑星と比べて非常に小さいため、暗くてフライバイの直前にならなければ「見えない」場合が多く、軌道も不安定だ。
JAXA関係者は、「今回、フライバイ用の機体ではない『はやぶさ2』で小惑星フライバイの世界最接近記録を更新したことは、探査機を小惑星に衝突させる誘導技術と同等の精密さを実証できた」と解説する。
また、今回の探査により、トリフネの軌道の推定精度は、フライバイ前の49.5キロからフライバイ後には0.78キロへと大幅に向上できた(信頼区間はどちらも3σ)。
JAXA宇宙科学研究所の藤本正樹所長は「プラネタリーディフェンスと『はやぶさ2』の成果を結びつけて語るのは勇気がいる」としつつ、「所長になりたての昨年4月に『7月5日に隕石落下し、日本に大災害をもたらす』という都市伝説について取材を受け、JAXAのプラネタリーディフェンスへの取り組みについて、世間にもっとアピールしていかなければならないと思った」と語った。
7.最終目的地への航行と限界への挑戦
はやぶさ2は、もともと14年の打ち上げから20年の地球帰還まで約6年の運用が見込まれていたため、設計寿命は7年だ。拡張ミッションの実施で現在は12年目に突入し、最終目的地の1998KY26 に到着する際は17年も運用していることとなる。
様々な機体トラブルに見舞われ、地球帰還が約3年遅れた初代「はやぶさ」を教訓にして、はやぶさ2は確実な運用のために改良がなされたが、延長運用によって不具合が生じ始めている。
三桝裕也・はやぶさ2拡張ミッションチーム長によると、航行を支えるイオンエンジン4基中の3基に問題が現れ始めている。メインミッションである地球-リュウグウ間の往復航行には使わずに温存していた1基も、劣化の兆候が見られる。
「イオンエンジンは1基あれば(最終目的地の)1998KY26への航行は可能。どこまで延命して使っていけるかがミッション継続の鍵となる」
今後は、地球の重力を利用して燃料を節約しながら軌道や速度を変える「スイングバイ」を27年12月と28年6月に行い、最終目的地の小惑星「1998KY26」に31年7月に到着する。
三桝氏は「初代はやぶさはこれ以上に苦しい状況で地球に帰還している。機器をケアしながら、最後の最後までやる」と力を込める。
地球に再突入して役目を終えた初代はやぶさとは異なり、はやぶさ2は地球に再び帰ることはない。最後の最後まで力をふり絞り、惑星科学や地球防衛のために探査を行う予定だ。
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