5.トリフネってどんな小惑星?

小惑星というと、火星と木星の間にある小惑星帯や、海王星の外に広がるエッジワース・カイパーベルトにあるものと思われがちだが、近年、注目されているのが地球に接近する軌道を持つ地球近傍小惑星だ。地球に衝突する可能性や詳細な探査がしやすいことなどで、その存在は今後ますます重要になってくると考えられている。

トリフネは、地球が太陽を周回する軌道よりも内側に一時入り込むことがある「アポロ群」に分類される。形は「はやぶさ2」が接近するまで不明だったが、今回のフライバイ探査で2つの岩(小さな星)がくっついた「雪だるま」のような形の画像を得た。そのため「接触二重小惑星(contact binary)」とみられている。

光学航法カメラがとらえた小惑星「トリフネ」
光学航法カメラがとらえた小惑星「トリフネ」(©JAXA・東京大学・千葉工業大学・東京科学大学・産業技術総合研究所・パリ天文台・カナリア天体物理研究所)

大きさは、光学航法カメラが撮影した画像から長軸が約840メートル、短軸が約340メートル(平均直径約540メートル)と推定された。

吉川氏は「一見してイトカワに似ている。どちらも、2つの小惑星がくっついてできた『コンタクトバイナリー』だが、トリフネのほうが、よりくびれが深いため、まだくっついたばかりで、今後、時間が経つにつれて隕石の衝突などでくびれが埋まってイトカワのようになるという見方がある」と語り、太陽系の惑星形成論を研究する際に役立てられそうな新たなサンプルだと解説した。

6.プラネタリーディフェンス(地球防衛)にどのように役立つの?

フライバイを成功させた拡張ミッションチームは、「トリフネ・フライバイの成果はプラネタリーディフェンスに寄与する」と強調する。

プラネタリーディフェンスとは、地球に衝突する恐れのある地球近傍天体を発見し、追跡観測を行って軌道を正確に求めて衝突確率を算出したり、衝突回避活動や被害最小化を検討したりする活動のことだ。JAXAは分かりやすいように「地球防衛」という日本語訳をあてている。

1994年に木星に天体が衝突したことや、21世紀になって地球近傍小惑星の発見が急速に増大したことなどから、科学領域だけでなく国際協力や法整備の検討も必要なため、国連でも議論されるようになった。各国の宇宙機関にも対応部門が設立されるようになり、JAXAにも24年4月にプラネタリーディフェンスチームが作られた。

地球衝突の回避策として、技術的に最も現実的な方法は「インパクト(小惑星に宇宙船をぶつけて軌道を変える)」で、NASAが22年、直径約160メートルの小惑星ディモルフォスに軽自動車ほどの大きさの探査機をぶつけて軌道を変える「ダート(DART)計画」を成功させている。

小惑星は直前にならないと見えず
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