DV(ドメスティック・バイオレンス)の恐ろしさは、身体的な傷だけでなく、人の心を根底から破壊する心理的支配にある。「鳥籠」に閉じ込められ、意思を奪われ、自分という存在が消されていく。

DVを経験した女性にレンズを向けるドキュメンタリー写真家のジュリエット・デュピュイ・カールは、彼女たちを「被害者」としてではなく、壮絶な過去を闘い抜いた「ヒロイン」として描いている。

暴力の現場だった部屋を安らぎの場所に変えたアポリーヌや、裁判官を目指すクロエなど、自由をつかみ取った女性たちは自分の人生を自分のために生きようとしている。

この写真プロジェクトに参加し、自らの言葉で過去を語るという過程そのものが、彼女たちの傷を癒やす。フィルムカメラが生み出す緩やかな時間の中で、女性たちは自分のもろさをさらけ出し、奪われた生命力を取り戻していく。

痛みを決して美化せず、内なる強さと輝きを映し出す写真は、女性たちが歩んできた道のりの確かな証しだ。

ジュリエット・デュピュイ・カール(写真家)

撮影: ジュリエット・デュピュイ・カール パリを拠点とするドキュメンタリー写真家。人道支援活動に携わった経験を基に、社会的マイノリティーの表象、女性に対する暴力がもたらす精神的・身体的影響をテーマに作品を制作し、政府機関や施設で広く展示されている。2025年仏「ZOOMSパブリック賞」を受賞

Photographs by Juliette Dupuis Carle

【連載第1035回】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2026年7月28日号掲載

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