<7月中旬に日本を揺るがせたニューヨーク・タイムズ紙のロシアスパイ報道。ロシアのスパイが日本で入手したハイテク部品がウクライナ戦争で使われている、というスクープだが、この記事には裏がある>

意外に感じる人もいるかもしれないが、情報機関が情報や物品を秘密裏に入手する試みの多くは合法に行われている。

ロシアの情報機関が日本でミサイル部品を購入していた事例もこのパターンに該当するようだ。ロシアはその部品でミサイルを造り、ウクライナの集合住宅に毎晩のように撃ち込んでいる。日本におけるロシアの工作活動は、2022年のウクライナ侵攻を受けて科された制裁を回避するための典型的な調達活動だった。

しかし、いくつかの西側情報機関とウクライナ当局がこの問題についてメディアに情報をリークし、先頃大きなニュースになった。これで、東京でのロシアの部品調達ルートは閉ざされるだろう。

日本は長年、スパイ活動の格好の舞台だった。独立した防諜機関がなく、スパイ活動全般を取り締まる法律もなかったため、各国情報機関はほとんど制約なしに活動できた。日本が世界有数のテクノロジー大国であることも、情報機関の隠れみのとして活動する企業が日本に拠点を置く一因になっている。今回発覚した事案でロシア側の拠点になっていた航空会社アエロフロートの事務所もその1つだった。

もっとも、秘密工作と違法な調達活動、通常の商取引の境界線は曖昧だ。「戦争は、異なる手段によって行われる政治である」というのは、19世紀前半のプロイセンの戦略思想家クラウゼビッツの言葉だが、情報活動もまた「異なる手段によって行われる政治」だ。

なぜ、ロシアの日本における工作活動がこのタイミングで明るみに出たのか。

ウクライナの外交当局は、ウクライナ人の命を奪っているミサイルの重要部品をロシアが日本で入手していると、日本政府に再三にわたり伝えてきた。しかし、外交ルートを通じた公式の抗議によってはロシアの調達活動を止められなかった。

「西側情報機関」が意味する具体的な組織
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