Chris Kirkham Akash Sriram
[ロサンゼルス 23日 ロイター] - 米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は約1年前、同社のロボタクシー(自動運転タクシー)ネットワークが「指数関数的(飛躍的)な速度」で拡大し、2025年末までに米国人口の半数が利用可能になると大見得を切った。
しかし、22日に行われた直近の決算説明会では、マスク氏や経営陣はより慎重な姿勢に後退。アナリストからはロボタクシー事業の展開が想定より遅れている点について質問が相次ぎ、そうした現状が足元のテスラ株急落の一因になったとみられている。
年初から22日終値までで約17%下落していたテスラ株は、23日午後の取引で下げ幅がさらに拡大した。
バークレイズのアナリストチームはノートで「テスラのロボタクシー事業が本格的な成長局面に入ったことを示すには、さらなる成果が必要だ」と主張。新たな展開目標が示されなかったことに加えて「これまで提示してきた目標も達成できていない」と指摘した。
テスラは25年6月、テキサス州オースティンで小規模なロボタクシー実証サービスを開始したが、その後の展開もテキサス州やフロリダ州の一部都市に限られている。しかもサービスエリアは郊外に限定されるケースが多い。
オースティンでのサービス開始前には、マスク氏がテスラの自動運転技術について「どこでも機能する汎用的なソリューションだ」と表現。これは都市ごとに慎重に事業展開を進めているアルファベット傘下ウェイモとの違いを強調した発言だった。
ところが今回の決算説明会では、ロボタクシーサービス拡大には都市ごとの個別対応が必要である、とマスク氏を含めた経営陣自らが認めた。
テスラのラース・モラビー車両エンジニアリング担当副社長は「規制環境は都市ごとに異なる。われわれが一都市ずつ展開しているのは、それぞれの規制要件に確実に対応するためだ」と語った。
またバイバブ・タネジャ最高財務責任者(CFO)は「ソフトウエアだけでなく運営面でも解決すべき課題がある」と述べ、小規模かつ管理しやすい車両群で問題を解決してから、大規模展開に移行する考えを明かした。
ウェルズ・ファーゴのアナリスト、コリン・ランガン氏は「なぜ車両台数がいまだに数十台規模なのか。数百台へ増やせない障害は何なのか」と厳しく追及した。これに対してテスラの人工知能(AI)担当副社長、アショク・エラスワミ氏は「少数の車両でも多くの走行データを集められる」と反論。その上で「ロボタクシーの走行距離は文字通り指数関数的に増加している。ただし、まだその初期段階にあるため、外部からは理解しづらいだけだ」と訴えた。
マスク氏も「誰にも危害を与えないことを前提に、可能な限り速いペースでロボタクシー事業を拡大したい」と安全性を重視する姿勢を強調した。
<なお遠いウェイモの背中>
テスラによると、有料利用者によるロボタクシーサービスの累計走行距離は250万マイル(約400万キロ)に達した。このうち38万マイルは車内に安全監視員を配置しない完全無人運転だった。
だが、ウェイモが25年3月末までに達成した2億2000万マイル超の自動運転走行距離と比べると、その差は依然として大きい。
フォレスターのアナリスト、ポール・ミラー氏は「商業展開という観点では、ウェイモが依然としてはるかに先行している」と指摘した。
それでも投資家がテスラに高い評価を与えているのは、将来的にロボタクシー事業や人型ロボット「オプティマス」が同社の主要な収益源になるとの期待があるからだ。テスラ株は現在、予想利益ベースで166倍超という極めて高い株価収益率(PER)となっており、従来の自動車メーカーや大手テクノロジー企業を大きく上回る水準にある。
テスラは今年1月に発表した投資家向け資料で、6月末までにロボタクシーサービスをダラス、ヒューストン、フェニックス、マイアミ、オーランド、タンパ、ラスベガスの7都市圏に拡大すると表明していた。
にもかかわらず、今月20日までの時点で実際にサービスを開始していたのはダラス、ヒューストン、マイアミの3都市のみだった。さらにヒューストンやマイアミでもサービスエリアは市中心部ではなく郊外地域に限定されている。
テスラは21日になってようやく「タンパとオーランドでもサービスを開始した」と発表した。これは決算発表を前に、複数のアナリストが展開遅れを指摘していたことを受けた動きとみられる。
ただし、これらの都市でもサービスは交通量の少ない郊外地区に限られており、本格的な都市中心部での運行には至っていない。
ロイターがダラスおよびヒューストンでサービス開始後に実際に利用したところ、配車までの待ち時間が長く、時間帯によっては全く車両が利用できないケースも確認された。