Miho Uranaka Anton Bridge
[東京 23日 ロイター] - 東京地方裁判所は23日、給食運営のシダックスの経営陣による買収(MBO)の際に実施した株式公開買い付け(TOB)価格である1株800円は公正でなく、950円が公正価格と判断した。事情に詳しい関係者が明らかにした。ファミリーマートの非公開化を巡る公正価格決定に続き、特別委員会など取引の公正性を確保するための措置(公正性担保措置)の実質性が争点となった判断で、近年増加する非公開化案件における少数株主保護や取引の公正性のあり方が改めて注目されそうだ。
香港の投資ファンド、オアシス・マネジメンは、TOB成立後の株式併合に反対し、会社法に基づき東京地裁へ株式価格決定を申し立てていた。オアシスは、800円は企業価値を十分反映していないとして、公正な価格の決定を求めていた。
判決は、特別委員会の設置や第三者算定機関による株式価値算定などの公正性担保措置について、形式的に講じるだけでは足りず、少数株主の利益を守るため実質的に機能していたことが必要と判断した。特に、本件では少数株主の過半数(マジョリティー・オブ・マイノリティー)の条件など他の公正性担保措置が十分ではなかったことも踏まえ、特別委員会の役割は「非常に重要」と指摘したという。
その上で、特別委について「独立して少数株主の立場に立った検討および交渉を実質的に行ったものとは評価できない」とし、「公正性担保措置が十分に講じられたとはいえず、一般に公正と認められる手続きにより公開買付けが行われたとはいえない」と結論付けたとみられる。
裁判所は、会社が決めたTOB価格と同額の1株800円は採用せず、市場株価やプレミアム水準の統計的分析などを踏まえ「一般に公正と認められる手続き」を経て公開買付けが実施されていれば成立したと考えられる価格として、公正な価格を1株950円と認定した。
現時点でオアシスからのコメントは得ていない。
今回の決定は、裁判所がMBO価格を事実上見直した数少ない事例となる。価格決定事案は個別の判断となるものの、今後のMBOでは買収価格の妥当性や特別委員会による価格交渉の実効性について、従来以上に厳格な説明が求められる可能性がある。
シダックスは2023年、創業家の資産管理会社によるMBOを発表し、1株800円でTOBを実施。その後、株式併合を通じて少数株主を排除し、上場を廃止した。TOB成立後はオイシックスがシダックスを完全子会社化した。
MBOや親会社による上場子会社の完全子会社化は、買い手と売り手が実質的に同じ側に立つため、価格決定の公正性や少数株主保護が課題となりやすい。TOB価格を巡る裁判では、伊藤忠商事によるファミリーマート完全子会社化を巡る株式価格決定を巡り、東京地裁が2023年、TOB価格(1株2300円)を上回る2600円を公正な価格と判断。24年には東京高裁も東京地裁の判断を支持した。