Atsuko Aoyama
[東京 22日 ロイター] - ドルが約40年ぶりに163円台に上昇する中でも、日米の金利差収益を狙った円のキャリー取引に依然として妙味があるとの見方が出ている。当局による円買い介入への警戒感が後退しており相場の変動率が比較的抑えられている事情がある。ここにきて、乗り遅れた投資家が方針を切り替えている可能性を指摘する声も聞かれ始めている。
<しびれ切らす>
ドル/円が163円に乗せた背景として、円キャリー取引の存在が取り沙汰されている。歴史的高値圏でもドル/円の上昇は止まらず、「介入を警戒してキャリー取引に手が出せないうちに、機関投資家への説明責任という意味で、キャリー取引から生じる利益が取れていないことへの説明をし切れなくなってきた」と、ある国内金融機関の為替ディーラーは話す。
ドル/円はじりじりと水準を切り上げており、特に円キャリーで生じる収益機会を損失しているとの見方だ。
キャリー取引とは金利差を利用して利益を得る投資手法で、金利差が拡大するほど妙味が増す。一方、為替が急変動する場合、金利差で得られる利益が吹き飛ぶ恐れがあるため、ボラティリティー(変動率)の安定を前提とした取引でもある。
<円キャリーに安心感>
現在の日米の政策金利差は2.5―2.75%と縮小しているが、ボラティリティーの低下により、キャリーに「取り組みやすい環境」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)でもある。1カ月物の予想変動率(インプライド・ボラティリティー)は足元で6%台と、11%超だった1月末からは大幅に低下している。
キャリー取引の妙味を低下させる介入への警戒感は、歴史的高値圏でも高まっていない。オプション市場では、プットとコールオプションの価格差を示すリスクリバーサルの1カ月物が7月に突発介入の可能性が報じられて警戒感が高まった時点に比べて、強い円高方向への警戒感が後退した。
JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉・為替調査部長は「162円手前での介入実施を想定していたが、当局の介入姿勢は思っていた以上に慎重」として、「以前、市場で想定されていたような防衛ラインはなくなったのだろう」と話している。
あおぞら銀の諸我氏は、介入などの一時的な損失の可能性にかかわらず「ポジションを作ることが最優先なのではないか。早めにポジションを構築すれば、金利差での収益はより多く得られることになる」と指摘。そうした動きが強まれば、ドル/円は一段と下がりづらくなるとの見方を示している。
一方、既に高値圏にあることが円キャリーでの新規ポジション構築の妨げになっているとの見方もある。為替介入の可能性が否定できず、急変動に伴うキャピタルロスを被るリスクもあるためだ。さらに、投機筋の円売りポジションは既に膨らんでおり、「新規にキャリー取引に参入する余力は少ない」と、スタンダードチャータード銀行東京支店の江沢福紘マーケッツ本部長はみる。
(青山敦子 編集:平田紀之、橋本浩)