「出生前診断=優生思想」。背後にある「完全に無視されてきた声」

医療の進歩で技術的には着床前診断が可能になったのに、日本では厳しい規制下にある。私はこの事実に驚いた。しかも、遺伝病当事者の方が抱える問題を知らずにいた。下山さんへのインタビューの冒頭で、そう率直に伝えたところ、下山さんは間髪入れずこう言った。

「知られていないことがまさに大きな問題なんです。野田秀樹さん率いるNODA・MAPの舞台『華氏マイナス320°』が話題になっています。実際に劇場へ足を運ぶと、その内容は遺伝病と出生前診断を扱うものでした。お芝居としては面白いのですが、訴えかけるテーマは、「遺伝病における出生前診断は、遺伝病の人たちを世の中から根絶やしにしようとする優生思想だ」ということだったのです。

『出生前診断=優生思想』。1970年代からメディアで繰り返されてきた、こうした言語空間はとても強固なもので、野田さんの芝居もその世界観の中でつくられていました」

しかし、その世界観の中で、完全に無視されてきた世界があった。それが、遺伝病の当事者たちの声である。子供を作りたいけれど、自分のような辛い思いをさせたくない、次代に受け継がせたくない──。こうした声は一切報じられてこなかった。

「寄り添う」だけでは見えてこない事実がある
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