
ドナルド・トランプ大統領は「プチ・デタント(緊張緩和)」をやろうとしているが、これは長続きしないと思う。特にAIをめぐる米中の闘争では、互いが恐怖感に駆られている。双方ともAIの軍事実装、とりわけ指揮命令系統で相手に主導権を取られることへの恐怖感が大きい。
かつての冷戦時代の米ソのように、本当のデタントにつながるか。米ソの場合も後から振り返ると、その実態には疑わしい部分もあるが、それでもかなりのレジームを作った。中国との間で、同様の法的枠組みを作ることはなかなか難しいと思う。
加えて今のアメリカは、トランプ政権が何らかの協定を結んでも、すぐ反故(ほご)にするかもしれない、そうした予測困難な国とみられている。
──米中デタントを志向するトランプ大統領に対して、中国は力による現状変更をしようとしている。
今までのところは成功してしまっている。日本に対しても同じだ。『戦後敗戦』でも書いたが、尖閣諸島の領有権をめぐる問題では、中国は一貫して力による一方的な現状変更の圧力をかけてきた。いわゆるサラミ戦術で、少しずつ既成事実で現状変更を図ってきた。
日中平和友好条約を結ぶ時、尖閣の領有権をどうするかという問題が残った。当時の中国のリーダーの鄧小平は、将来の世代に委ねようではないかと言った。要するに「棚上げ」をした。
ところが冷戦が終わった。冷戦末期、中国はソ連に対抗するためにアメリカや日本と組む必要があった。中国はこれを反覇権闘争と位置付けた。日本はその中で高く「売れた」。つまり戦略的に価値があった。
冷戦が終わり、ソ連が崩壊すると、日本の戦略的価値は下がった。われわれはそれに十分気付かなかった。そして92年、中国は尖閣諸島は中国の領土だと一方的に法制化した。