──その「やり直し」の1つが22年に設立した半導体企業ラピダスだと思う。一般的には官が民の仕事をするのはよくないと言われることが多い。船橋さんはラピダスを肯定的にみているのか。
ほかになかなか選択肢がない。ただ、7年間で10兆円という投資は、日本政府として久々、あるいは初めてと言っていい規模の産業政策だ。しかも半導体は決定的に重要な分野で、国民の一人としても成功してほしいと思う。
ただ、『戦後敗戦』でも書いたが、半導体敗戦を振り返ると、日本は技術は強かった。一種の職人芸のようなものもあった。一方で、日本の半導体企業のトップは工場長の延長のような人が多かった。何が一番欠けていたかというと、マーケティングとファイナンスだ。
TSMC(台湾積体電路製造)のトップはファイナンスにものすごく詳しく、強かった。それに驚いたと、エルピーダメモリの故・坂本幸雄社長も本の中で書いている。私も同じように感じる。
明治時代はお雇い外国人を大臣よりも高給で雇った。それによって近代化を加速させた。日本はもう一度キャッチアップする時代に入っている。
──むき出しのパワーポリティクスを志向するトランプ政権と、現実主義の中国はこれまで以上に真正面からぶつかるようになるのか。それとも、日本の頭越しに突然、米中が握手するようなことはあり得るのか。
握手したとしても続かない。かといって、決定的な対決にも向かわない。極めて不透明で曖昧な状況になるのではないか。いわば「G2崩れ」の状況で、実質的なG2にもなり得ず、なり切れない。基本的には米中で最後は仕切ると言わんばかりの状況が続き、日本にとっては非常にやりにくい時代だ。