「Gemini」モデルやAIサービスへの旺盛な需要を取り込み、主要なAIクラウドプラットフォームとしての優位性を高めていることは、投資家にとってポジティブな材料です。実際、決算発表後のアルファベットの株価は最高値の更新を続けました。
しかしながら、アルファベットの中長期的な企業価値を評価するにあたっては、現在の繁栄の影に潜む2つの大きな死角を注視する必要がありそうです。
■企業価値を揺るがす「2つの死角」
第一のリスクは、深刻な人材流出による競争力の低下です。
ノーベル化学賞を受賞したジョン・ジャンパー氏(元グーグル・ディープマインド副社長)や「Gemini」開発の中核を担ったヨナス・アドラー氏とアレクサンダー・プリッツェル氏など、主要研究者が相次いでオープンAIやアンソロピックへ移籍することが明らかになりました。
IPOを視野に入れる未上場企業が提示する莫大なリターンが、強力な引き抜きツールになっていると見られ、これらの人材流出のニュースを受けて、6月22日のアルファベットの株価は一時7.2%安まで急落しました。
第二のリスクは、AIインフラへの過剰投資がもたらす財務への重圧です。
現在、アルファベットをはじめとするハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)は、「AI軍拡競争」のもと、データセンターの拡張などに巨額の投資を行っています。これによってメモリー需要が急増して価格が高騰しており、皮肉にもハイパースケーラー各社の支出を一段と膨らませる副作用を生んでいるのです。
主要なハイパースケーラー5社のフリーキャッシュフロー(FCF)は急激に悪化しており、赤字転落すら目前に迫っている、として市場は警戒を強めています。
6月25日のアメリカ市場で、好決算を受けてメモリー株が急騰する一方、アルファベットを含む主要テック企業の株価が下落したのは、投資の回収遅れに対する懸念の表れと言えるでしょう。