激しい貿易摩擦、もし人民元高を受け入れたら


TORU HANAI FOR NEWSWEEK JAPAN
日本や韓国では経済成長と人件費上昇に伴い、アダルトグッズ製造やシリコン成型などの低付加価値産業は衰退していった。だが、中国は違う。知識集約産業と労働集約産業が現在も同じ地域に同居しているのだ。これは21世紀の製造業において中国の大きな強みとなっている。
米起業家のイーロン・マスクは研究開発拠点と製造拠点の一体化に徹底的にこだわる。開発者が製造現場をよく知ることが技術開発には不可欠だと考えるからだ。高給取りのトップエンジニアを工場と同じオフィスで働かせるのは容易ではないはずだが、強い意思で貫徹している。
こうした開発と製造の一体化はアメリカでは異例でも、中国ではごく当たり前だ。女性工員が筆でラブドールの化粧をしているのと同じ場所で、エンジニアがAIの組み込みやシリコンの配合を研究している。
ただし、この製造業の理想郷がいつまで続くかは分からない。
2025年、中国の貿易黒字は1兆1900億ドル(約190兆円)と過去最高を更新した。そして1980年代の日本が直面したような激しい貿易摩擦が始まっている。
かつての日本が円高を受け入れたように、中国が人民元高を受け入れたら、アダルトグッズ産業を筆頭に利益率の低い製造業は大きな打撃を受けるだろう。高付加価値の製品にシフトするか、開発拠点を中国に残して製造拠点を海外に移すかの難しい選択を迫られる。
とはいえ、「夜の娯楽」は絶好調で、危機はまだ先の話。貿易摩擦が表面化するハイテク産業を尻目に、アダルトグッズが中国に雇用をつくり、コスパの高い製品が世界中の消費者を楽しませている。
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