さらに高市早苗首相との共同声明には、「自国のAI に関する能力を強化し、安全、安心で、信頼できる AI エコシステムを構築することの重要性を認識し、日 ASEAN・AI 共創イニシアティブの下で更なる協力を模索することで一致した」という文言が盛り込まれました。

「何よりもまず、人間の権威を維持し、公共機関の責任を明確にすることが重要です。政府や機関は改めて責任を負う必要があります。


AIは開発のために役立つものでなければなりません。しかし、AI政策を速度や効率、規模だけで測る競争のように扱うことには抵抗しなければなりません。より重要なのは、能力や人材、インフラ、データガバナンス、そしてAIをいつどこで使うべきか、どこで制限すべきかであり、人間の判断が最優先されることに自信を持つことです。
 

人工知能は今後も進化し続けますが、その目的はあらかじめ決まっているわけではありません。人間の尊厳を損なうのではなく、豊かにするために人間に奉仕するAIシステムを構築しなければなりません。そして、そうしたシステムの責任を負う制度や機関を作っていかなければいけません。また、どんな機械も私たちの代わりにならない社会を築かなくてはなりません」

◇ ◇ ◇

東京大学でのアンワル首相の講演をコーディネートしたイスラム研究者の池内恵・東大先端科学技術研究センター教授は、「哲学的で格調高く、野心的な講演だった。AIの発展は人間の共感や社会の正義、多様な人々の包摂を実現するために用いられなければならない、機械に対する人間の主導性を失ってはならないという根本的な問いかけは、AIの到来以前から、アンワル首相が「ムスリム民主主義者(Muslim Democrat)」として取り組んできたものだ」と評しています。

さらに、これまでアンワル首相が中国や韓国で講演した際は、公式SNSでマレー語のみで報告されていましたが、今回の日本での講演は英語のタイトルや解説をつけられていることから、「この講演は日本人向けというだけでなく、日本を通じて世界に向けた普遍的な演説を意図したものだ。日本が世界に向けた演説の場として選ばれている、短期的な経済的利益を超えた、深い意味での期待が日本人に寄せられていることは、もっと知っておいてよいことではないか」と意義を深掘りしています。

池内教授によると、AIの発展によって得られる経済成長や機会への期待は、とくにマレーシアの中間層で大きく、脆弱な連立によって政権を獲得したアンワル首相は、AIによる飛躍的な発展の可能性を掲げ、訪日で多くの協力を勝ち得たと成果を宣伝しなければならない立場だったと言います。

しかし、訪日直後の東大講演では、一歩引いてAIの危険な側面や不公正・非合理に丹念に目を向け、経済成長の中で取り残されかねない人々への共感と思いやりを強調しました。

「人工知能による人間性の棄損の恐れという全人類的な課題に取り組む姿勢と、経済発展と科学技術の進展による生活の劇的な変化によってイスラムの価値規範が揺るがされることを恐れるマレーシア国民の多くへの目配りの両方が得られる。東大での演説は、一石二鳥をもたらすものだった」と池内教授は総括しました。

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