


『仲間ではない者』には行動を
イスラエルの人口1020万人のうちキリスト教徒は約2%を占め、その79%はアラブ系だ。エルサレムを拠点とし宗教間の対話を目指すロッシング・センターによると、イスラエルには現在約2700人のキリスト教聖職者が暮らしているが、大半はイスラエルの市民権を持っていない。
キリスト教徒に対する攻撃的な事案は、2023年10月7日のハマスの攻撃以降、増加している。
キリスト教徒向けのホットラインを運営するユダヤ系イスラエル人のボランティア団体「宗教の自由データセンター(RFDC)」によると、唾を吐く、暴言、器物損壊、身体的暴力、ネットでの嫌がらせなどの敵対的事案は、24年は107件、25年は181件だった。
ただし、実際には報告されない嫌がらせも多いと、RFDCの創設者・代表のイスカ・ハラニは語る。RFDCとしてイスラエル当局に苦情を申し立てても、その大半は対応されないと言う。
「取り締まりがなければ、またやってもいいと言っているようなものだ。唾を吐いて逮捕も起訴もされなければ、次はもっとひどくなる……いつまで待てばいいのか。殺人が起きるまで?」
こうした敵意の高まりに対し、イスラエルの現連立政権の責任を問う声もある。政権が宗教的ナショナリズムを助長して、ユダヤ人過激派の間に「何をしても許される」という感覚が広がっているというのだ。その背景には、ガザ戦争開始以降、イスラエル国内を覆っている憎悪や恐怖、分断もある。
ローマ教皇庁立聖書研究所のジョセフ・シーバース名誉教授は、イスラエル社会の一部にある救世主待望論(メシアニズム)が、「よそ者」への攻撃的な態度を助長している可能性を指摘する。
「キリスト教徒が(イスラム教組織の)ハマスやヒズボラとは無関係でも、『仲間ではない者』には行動を起こしてもよいと感じるのだろう」