Timour Azhari Federico Maccioni Yousef Saba

[リヤド 3日 ロイター] - フードテック起業家のサラ・アミニ氏は、イランとの戦争が続く中でもペルシャ湾岸諸国の企業がどの分野で支出を続けているかを確認するため、サウジアラビアの首都リヤドへと飛んだ。

そのサウジアではレストランは満席で、企業は依然として事業拡大を話題にしていた。これはイランの攻撃圏内にあり、接客や飲食セクターが打撃を受けている他の湾岸諸国の経済状況とは対照的だ。

アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国を拠点に、食品流通企業の業務デジタル化とコスト削減を支援する人工知能(AI)プラットフォームを運営するアミニ氏は「サウジに来るとまるで普段と変わらないように感じる」と語った。

サウジ経済全体が必ずしも通常通りというわけではない。国際通貨基金(IMF)は3日同国の予想成長率について、4月時点の3.1%から約2%と大きく下方修正した。

IMFは「短期的影響を超えて、紛争が長期化すれば投資家の信頼が損なわれ、中長期的な成長と経済多角化の展望が弱まる可能性がある」と指摘する。

ただアミニ氏の楽観的な見方からは、サウジがこれまでのところ強力な国内消費基盤と、ホルムズ海峡を回避するために原油や物流のルートを紅海沿岸の港へと変更したことによって、地域の他の国々よりも戦争による変化をうまく乗り切っている様子もうかがえる。

実際3日に発表された調査結果では、サウジの5月の非石油民間セクターは、事業の先行きへの楽観姿勢は依然として控えめながらも、国内需要の改善とサプライチェーン(供給網)の安定により、過去3カ月で最も速いペースで拡大した。

リヤド銀行のチーフエコノミスト、ナイフ・アルガイアス氏は調査結果に関して「この改善は主に、国内需要の向上と以前中断されていたプロジェクトの再開に支えられた、生産と新規受注の力強い伸びによるものだ」と分析した。

投資ファンド助言会社のマネジングディレクターを務めるワリード・ハエック氏は、サウジにおけるファンド設立需要の加速や、現地の富裕層からの問い合わせの増加を実感していると明かす。

「多くの人々が他の湾岸協力会議(GCC)諸国から資本を本国に還流させており、これはおそらく安全への逃避が原動力となっている」という。

<大きな戦略転換>

戦争がサウジにもたらした変化は、ムハンマド皇太子が掲げる、社会変革と新産業育成を目指す「ビジョン2030」の下での石油依存脱却戦略の転換と軌を一にしている。

10年前に「ビジョン2030」が発表された当初、そこに盛り込まれたのは全長170キロに及ぶガラスと鋼鉄のスマートシティー「ザ・ライン」や、山の上に淡水化した水を1000メートル以上汲み上げて人工雪を作るスキーリゾート「トロジェナ」といった、巨額の資金を投じる巨大プロジェクトだった。

だが4月に発表された2026-30年の新戦略では、こうしたプロジェクトは除外されるか大幅に規模が縮小。代わりに観光、産業、AI、物流といった収益が期待されるセクターに焦点が当てられており、投資の多くは政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)経由で行われる。

グローバルソース・パートナーズの湾岸アナリストで、ハリジ・エコノミクスのディレクターを務めるジャスティン・アレクサンダー氏は「プロジェクトの優先順位に関して言えば、戦争はPIFが投資戦略の再調整を検討していた極めて重要なタイミングで起きた」と分析する。

戦略の転換で恩恵を受けている地元企業もある。

リヤドを拠点とし、中小企業向けにオンデマンドの倉庫保管や輸送を提供するテックプラットフォーム「シルダブ」の共同創業者、アブドゥルラフマン・アルナムラ氏は「ビジョン2030には物流に投資する計画があった。現在起きていることは基本的にこれらの目標を加速させている」と話した。

アルナムラ氏によると、2月下旬の開戦以来ジェッダなどの紅海沿岸の港からコンテナを搬出し、湾岸全域に商品を配送したいという新規顧客からの電話が毎日かかってくるようになった。これは、紅海経由で湾岸の貨物を転送するサウジの戦時イニシアチブの後押しも受けている。

こうした中でアルナムラ氏の現在の優先事項は、事業の成長に対応するため、50人の従業員数をさらに増やすことだ。

かつて客室を埋めるのに苦労していた紅海の観光リゾートも、より手軽で安全な休暇を求めるサウジの居住者を中心に需要が増加している。

不動産会社JLLのデータでは、1月から3月のサウジ全土のホテル稼働率は平均66.3%で、前年同期から約3ポイント上昇した。これに対してムーディーズ・アナリティクスは、ドバイのホテル稼働率が2月の80%から、第2・四半期には約10%まで落ち込むと見込む。

サウジ観光省のレポートに基づくと、今年第1・四半期の外国人と国内の観光客数は、前年同期比8%増の3720万人に達した。外国人は13%減少したが、国内旅行がそれを補った形だ。

<不可欠なライフライン>

それでも軍事費などの政府支出の急増と石油収入の減少が響き、サウジの第1・四半期の財政赤字は335億ドルと予想を大きく上回った。

財務省の報道官は、赤字の拡大は一時的なキャッシュフローの遅れと、紛争の影響を緩和するための投資加速を反映したと説明している。

イランでの戦争が始まって以来、サウジは数百回に及ぶイランのドローン(無人機)やミサイルの標的となり、石油インフラが被害を受け、ホルムズ海峡の封鎖で輸出も影響を受けた。

しかし国営石油大手サウジアラムコのアミン・ナセル最高経営責任者(CEO)の話では、海峡を避けて原油を紅海沿岸の港へ転送することでサウジに「不可欠なライフライン」が提供された。

輸出量は減少しているものの、原油価格の上昇がその損失を補っており、見通しは改善しているとみられる。ADCBのチーフエコノミスト、モニカ・マリク氏は「イランによるホルムズ海峡封鎖に伴うサウジの(輸出)量の減少を、原油価格の上昇が十分に補うことが明らかになってきた」と述べている。

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