一見、この「2つの朝鮮」路線で北朝鮮の攻撃的姿勢が消え、朝鮮半島に平和的安定がもたらされるように思える。しかし事態はそれほど簡単ではない。韓国は依然として統一を断念していないからだ。事実、韓国憲法は領土を「韓半島と付属島嶼(とうしょ)」と定め、「大韓民国は統一を志向し、自由民主主義的基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立しこれを推進する」と定めている。

そして韓国側の統一への未練こそが北朝鮮にとっては脅威となる。憲法に「領域に対するいかなる侵害も絶対に許容しない」と新たに明記した北朝鮮にとって、統一を北側に呼びかける韓国政府や進歩派民間団体の行為こそが、領域に対する重大な侵害になるからだ。北朝鮮の指導体制を誹謗中傷する宣伝ビラを飛ばす保守系団体の行為以上に、進歩派の政権と民間団体による「朝鮮半島の統一こそが本来の姿だ」という主張が、現在の北朝鮮の国家的正統性を否定するものと解釈される。
 

韓国人のナショナリズムと衝突

だからこそ李在明(イ・ジェミョン)政権は大きなジレンマに直面する。政権内部にも統一部長官の鄭東泳(チョン・ドンヨン)を筆頭に北朝鮮との対話を急ぎ、韓国側も「2つの朝鮮」として併存する方針を認めるべきだ、という意見がある(離婚状態を法的な離婚にするということだ)。

しかし、この主張は韓国人のアイデンティティーの根幹を成すナショナリズムと衝突する。仮に北朝鮮が示唆するように、南北がそれぞれ異なる国家であり、それぞれが異なる歴史と民族を持つという考えを認めるなら、韓国人もまた自らの歴史的アイデンティティーを大きく変えなければならないからだ。韓国人が誇る高句麗や渤海の歴史、さらには民族独立に向けた朝鮮半島北半分における運動の歴史を、彼らがそう簡単に北朝鮮側に譲るとは思えない。

新たな「歴史認識問題」が発生
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