選挙地盤の分断と支持層の断片化
英国政治では現職首相を公然と引きずり下ろした「第一の刺客」は党首選で議員からの反感を買い、最終的に敗北すると言われる。ストリーティング氏はスターマー氏を辞任に追い込んだ張本人と見なされることを恐れて党首選出馬にまで踏み込まなかった。
しかし労働党衰退の理由はストリーティング氏が指摘したスターマー氏の指導力不足と不人気だけでは片づけられない。背景には労働党を支持してきた選挙地盤の分断があり、支持層の断片化がある。
「レッド・ウォール(赤い壁)」と呼ばれる取り残された脱工業化地帯の有権者は国境警備と移民管理の強化を求める一方で、比較的収入や生活が安定している高学歴者や若者はリベラルな政策を求めるという股裂き状態に労働党は置かれている。
これまで労働党を支持してきた票はリフォームUKや、環境から強硬左派に間口を広げた緑の党、中道リベラルの自由民主党の三つに分かれて流出している。
補選でバーナム氏が勝利すれば直ちに党首選を行う
穏健左派と見られてきたバーナム氏はブラウン政権で閣僚を務めたベテラン政治家で、17年からマンチェスター市長を務める。異名は「北の王」。補選を経て下院議員になる道をスターマー氏に閉ざされたため、党首選に名乗りを上げることができなかった。
しかしマンチェスターのジョシュ・サイモンズ下院議員(メイカーフィールド選挙区)が「この時代に立ち向かうための革新性、エネルギー、そして並外れた勇気を持つリーダーに道を譲る」として辞職を発表したため、バーナム氏にも道が開ける可能性が出てきた。
バーナム氏の立候補には労働党全国執行委員会の承認が必要だが、スターマー氏は自身の立場が弱まっている現状では立候補を認めざるを得ないと非公式な警告を受けたと報じられる。バーナム氏の支持者はメイカーフィールド補選で彼が勝利すれば直ちに党首選を行うと息巻く。