不思議な光景だった。場所はアメリカ北西部アイダホ州のスキー場ボガスベイスン、季節は春。地肌が露出し、名残雪が点在する山腹の斜面に、白く輝く巨大なドームができていた。
夏が来れば周囲は緑に染まり、ドームの両端は丸みを帯びて、長い食パンみたいな形状に変わる。でも秋が来て冷え込みが厳しくなったら、待ちに待った収穫の季節だ。断熱材の屋根を外せば、大事に「育て」てきた真っ白な雪が顔を出す。
人呼んでスノーファーム(雪農場)。あるいはスノーストレージ(雪貯蔵庫)とも。気候変動がスキー場に及ぼす影響に対処するための新技術で、北米大陸では昨年、ここボガスベイスンとカナダのブリティッシュコロンビア州にあるサンピークスのスキー場で初めて採用された。
原理は単純だ。冬の間に降った天然の雪や人工的に降らせた雪をかき集め、サッカー場ほどの広大な敷地に、4~5階建てのビルくらいの高さまで積み上げ、特殊な断熱性のシートで覆って外気を遮断し、大量の雪を守る。
結果は? どちらのスキー場でも効果てきめんだったという。「電話が鳴りやまない」と言ったのはサンピークスの管理責任者ティム・フォスター。「あちこちのスキー場から問い合わせが来ている。今もどこかで誰かが、こいつの採用を検討しているよ」
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