「目に見えない恐怖」

3月8日、ノルウェーのオスロにある米国大使館付近で即席爆発装置(IED)が爆発した事件を皮切りに、翌9日にはベルギーのリエージュでシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)を狙った爆発事件が発生した。

さらに、3月13日にはオランダのロッテルダムでシナゴーグへの放火、14日にはアムステルダムのユダヤ系学校付近での爆破事件が相次いで報告された。これらの事件において、Ashab al-YaminはSNSやテレグラムといったデジタルプラットフォームを駆使し、迅速に犯行声明を拡散させたのである。

こうした攻撃の連鎖は、単なる宗教的な憎悪に基づくものではなく、国家間の紛争を背景とした明確な戦略的意図に基づいていると考えられる。

特に注目すべきは、実行犯の構成とそのリクルート手法である。フランスのパリで計画されたバンク・オブ・アメリカに対する爆破未遂事件では、逮捕された実行犯の中に未成年者が含まれていたことが判明している。

彼らは高度な訓練を受けた工作員ではなく、SNSを通じてデジタル教育され、わずか500ユーロから1000ユーロ程度の金銭報酬を提示されて犯行に及んでいた。これは、イランやロシアが欧州で多用し始めている「犯罪の外部委託」という手法の典型例である。

思想的な忠誠心よりも金銭的な動機を持つ小規模な犯罪者や若者を「使い捨ての実行犯」として利用することで、首謀者側は自らの痕跡を消し去り、法的・外交的な追及を逃れることが可能となる。

英国のロンドンで3月23日に発生した事案も、この組織の論理を端的に象徴している。ユダヤ系の医療慈善団体である「ハツォラ」の拠点が襲撃され、4台の救急車が放火された。

この攻撃による死傷者は報告されていないが、ユダヤ系の緊急サービスという象徴的なソフトターゲットを狙うことで、欧州に住むユダヤ系コミュニティに対して「中東の紛争は対岸の火事ではなく、あなたたちの日常も戦域である」という心理的メッセージを送り込んだ。

さらに4月16日、Ashab al-Yaminはロンドンのイスラエル大使館に対し、放射性物質や発がん性物質を搭載したドローンで攻撃を行ったとの声明を発表した。

この主張自体の信憑性については、技術的検証において疑問視される部分もあったが、そのような「目に見えない恐怖」を煽ること自体が、彼らの目的とする心理戦の一環であったことは疑いようがない。

欧州各国にとっての新たな課題
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