欧州各国にとっての新たな課題
また、活動の範囲は欧州圏内にとどまらず、トルコのイスタンブールにも及んでいる。4月7日、イスラエル領事館を標的とした「スウォーム(群れ)攻撃」が発生した。
これは、宗教的な動機を持つ人物と、前科のある兄弟という、背景の異なる複数の実行犯が同時に襲撃を試みるという複雑な形態をとっていた。
トルコ当局は彼らを拘束し、一部のメディアはイスラム国(IS)との関連を疑う報道を行ったが、事件が発生したタイミングや標的の選定は、欧州で続くAshab al-Yaminの活動サイクルと密接に一致していた。
このように、既存の過激派ネットワークの残党や犯罪者を混在させることで、誰が真の黒幕であるかの特定をさらに困難にさせる高度な偽装工作が行われている。
今日のAshab al-Yaminを支える要因はいくつか考えられる。まず第一の要因は、低レベルな工作の外部委託による「否認可能性」の確保である。
ロシアが欧州で展開しているハイブリッド工作と同様に、イランもまた自国の工作員を直接的な危険にさらすことを避けている。代わりに現地の末端犯罪者などを利用して「安価な恐怖」を量産する戦術を洗練させており、これによって国家としての関与を曖昧に保っている。
次に、こうした手法の背景にあるのが第二の要因である非対称性の追求だ。米国やイスラエルの本土を直接攻撃すれば、イラン政権に対して壊滅的な報復を招くリスクがある。
しかし、比較的警備の薄い欧州のシナゴーグや商業施設を帰属不明の集団が攻撃するのであれば、エスカレーションを抑制しつつ、相手側の社会的コストを効果的に増大させることができる。
そして第三に、これらを下支えしているのが、中東での戦争が国境を越えた動員を加速させているという点である。
国家支援型のプロキシ、金銭目的の犯罪者、さらにはネット上で過激化した個人という、本来であれば相容れないはずの異質な主体が、一つの紛争を契機に共通の標的へ向かってベクトルを合わせる多角的な脅威環境が形成されているのである
欧州各国にとって、Ashab al-Yaminの台頭は新たな課題を突きつけている。