<中東情勢の緊迫化に伴い、突如出現した謎の組織「アシャブ・アル=ヤミーン(Ashab al-Yamin)」。イランの関与が疑われるこの集団は、SNSでのリクルートや犯罪の外部委託を駆使し、欧州各地で新たな形態の心理戦を展開している>

2月末以降、中東における米国・イスラエルとイランの緊張関係が激化する中で、その対立の火花は欧州諸国やトルコといった隣接する地域へと飛び火している。

この混迷する情勢下で、突如として国際社会の注目を集めるようになった存在が「Ashab al-Yamin(アシャブ・アル=ヤミーン)」、正式には「Harakat Ashab al-Yamin al-Islamia(HAYI)」と称される組織である。

このグループは、これまでの伝統的なテロ組織とは一線を画す特異な動きを見せており、国家の影がちらつくハイブリッド戦の新たな担い手として、欧州諸国の治安当局から極めて高い警戒感を持って注視されている。

Ashab al-Yaminという名称が公の場に現れたのは、2026年2月28日に開始された「Operation Epic Fury(エピック・フューリー作戦)」以降のことである。

それ以前の国際的なテロ組織リストや安全保障当局の監視データベースには、この組織に関する具体的な記録や活動実績はほとんど存在しなかった。この突如とした出現こそが、同組織の正体を読み解く上で最も重要な鍵となっている。

欧州の複数の情報機関や、米国の有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどによれば、Ashab al-Yaminはイランのインテリジェンス機関が自らの直接的な関与を隠蔽し、攻撃の否認可能性を確保するために創設したフロント組織、あるいは偽装名称である可能性が極めて高いと分析されている。

同組織が欧州で展開している活動の中心は、高度な軍事作戦というよりも、むしろ低コストで心理的影響力の大きい嫌がらせや破壊工作にある。2026年3月初旬から始まった一連の攻撃は、その狙いを象徴的に示している。

「目に見えない恐怖」
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