憲法第9条と第25条は「いわば車の両輪」

武器輸出の背後にあるものは、戦争に間接的に加担し、人の命を奪うということだけではない。ここからも明らかなとおり、私たちの生活に直結する問題でもある。

中央社保協は、労働組合、医療・福祉関連の諸団体、女性団体などから成るという。1958年に発足した、社会保障制度の改善を目指す共同の運動組織だ。全国各地で社会保障の拡充を求める請願署名集め、行政機関への陳情などに取り組んでいるそうだ。

運動の立脚点は、憲法第25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。/国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」に基づく、「国民生活の生存権、国の社会保障的義務」という規定だ。

そのような観点から見ても、武器輸出の影響が私たちの日常生活にまで及ぶことは想像に難くない。

「軍事費が増やされると社会保障費が削られるのは、歴史が証明しています」と述べる林事務局長の言葉を最後に、この文章を締めくくろう。

「憲法の第九条と第二五条はいわば車の両輪で、平和と国民生活の安定を支えるものです。軍拡のために社会保障費を削るのではなく、逆に軍事費を削り、ミサイルよりケアの充実の道を選択すべきです」(102ページより)

『ルポ 軍事優先社会――暮らしの中の「戦争準備」』

 『ルポ 軍事優先社会――暮らしの中の「戦争準備」

  吉田敏浩・著
  岩波新書

 

 (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 世界宗教入門
2026年5月5日/12日号(4月28日発売)は「世界宗教入門」特集。

イラン戦争の背景にある三大一神教を基礎から読み解く[PLUS]宗教学者・加藤喜之教授の「福音派」超解説

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます