社会的移動性の低下は所得分布の最底辺と最上位で固定化

しかし子どもが親を上回る所得を得られる割合は2008年金融危機前の60〜65%から10年以降は44%にまで落ち込んだ。社会的移動性の低下は特に所得分布の最底辺と最上位で固定化している。住宅価格の高騰と実質賃金の停滞が主因とみられる。

若い世代は「稼ぎ」ではなく「相続」によって豊かになれるかが決まる親ガチャ時代に突入しつつある。出発点の異なる人々が特定の結果に到達できる確率では英国は米国と並んで低いグループに属する。北欧、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドは上位に位置する。

英国の地域格差は根本的な課題だ。炭鉱・製造業を基盤としてきた北東イングランド、ヨークシャー&ハンバー、ウェスト・ミッドランズ、ウェールズ、スコットランドは格差是正の兆候はほとんど見られない。脱工業化の後遺症が世代を超えて再生産されている。

「エリート職への選ばれた少数の上昇移動」は本質ではない

教育面ではコロナ危機の傷跡が深く残る。学力格差は縮小傾向にあったものの、コロナ危機で逆戻り、今も回復していない。高等教育への進学率は上昇しているものの、低所得層の学生が不利な状況は解消されていない。

25〜29歳の若者の高度専門職へのアクセス格差は拡大している。高度専門職に就く割合は低位労働者階級出身で7.8%、高度専門職出身で30.9%であり、その差は14〜16年の15ポイントから22〜24年には23ポイントへと広がった。

社会移動委員会は「エリート職への選ばれた少数の上昇移動」を社会的移動性の本質とみなしてきたこれまでの枠組みを退けている。圧倒的多数の人々にとっての社会移動を見えなくさせてしまうためだ。その代わり「集合的繁栄の向上」としての社会移動を打ち出す。

それぞれの地域に根ざした政策こそ機会格差を縮小する最善策

低位労働者階級から中間職を経て高度専門職に階級を変えることを強いる移動ではなく、あらゆる地域の人々が地元でも輝ける社会の設計が求められている。それぞれの地域に根ざした政策こそ英国全体の機会格差を縮小する最善の経路だと論じている。

人工知能(AI)と技術革新が労働市場を再編しつつある今、処方箋も刷新する必要がある。報告書は「教育がすべての問題を解決できるという幻想から離れ、すべての教育水準・職能水準・あらゆる地域において公正な経済的機会を保障する」ことを提言している。

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