『日本漁業の不都合な真実』(佐野雅昭・著、新潮新書)の著者によれば、ここ数年、日本漁業は急速に苦境に陥っている。

 2023年に世界の漁業・養殖業生産量は2億2700万トンに迫り過去最大を記録しましたが、日本の生産量は減少を続け、383万トンとなりました。過去最大だった1984年からは約70パーセントも減少しています。(「まえがき」より)

しかも漁獲量だけが問題なのではなく、漁業者も減少の一途をたどっているという。水産庁によれば、2023年の漁業就労者数は12万1389人で、つまり18万985人だった2013年の7割弱にまで減少したことになる。

『日本漁業の不都合な真実』

わずか10年でここまで減ったというのは驚きだが、このままいくと30年後には漁業者がいなくなり、日本の食卓から国産魚が消えるという悲観的な予測もあるようだ。

ちなみに、著者は大学時代に国際政治学を学び、卒業後は銀行員としてバブル期前夜の東京都心で働いていたという人物。お金さえあればなんでもできるという空気が流れるなか、環境問題や食料問題への関心が強くなり、なかでも“現代唯一の原始産業”である漁業への興味が膨らんでいったのだという。

そこで銀行を辞めて東京水産大学(現東京海洋大学)の大学院修士課程で学び、終了後は水産庁に勤務。そののち東京水産大学、鹿児島大学水産学部で学究生活を続けているそうだ。

なかなかない経歴の持ち主だが、なんとしても日本の漁業と魚食文化を守りたい思いが強いというだけあり、本書の内容も非常に説得力に満ちている。

バブル崩壊で挫折した「海業」がここにきて復活しているというトピックを筆頭に、興味深い話題が満載だが、なかでも私が引きつけられたのが温暖化によって水産資源がどう変わっていくのかという問題だった。

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