<見た目で判別できない「不審者」を探したり警戒したりするよりも、客観的に把握でき、改善も可能な「場所」に注目する考え方のほうがはるかに現実的で効果的だ>

毎日のように事件が報道されているが、その背後にはどれほどの被害が埋もれているのか。

法務省が行った「犯罪被害実態(暗数)調査」(2024)によれば、16歳以上の人が経験した被害のうち、警察へ届け出られたものは、わずか約22%。これを逆算すれば、現実に起きている被害は、警察が把握している件数の約4.5倍にのぼることになる。

こうした現実を直視し、悲劇を繰り返さないためにはどうすればいいのか。

犯罪学には、犯罪の「人」に注目する「犯罪原因論」と、「場所」に注目する「犯罪機会論」という二つの視点がある。前者が「なぜあの人が」と犯行の「動機」を探求するのに対し、後者は「なぜここで」と犯行が成功しやすい「機会」の除去を重視する。つまり、たとえ動機があっても、犯行のコストやリスクが高ければ犯罪は実行されない、と考えるのが犯罪機会論だ。

犯罪機会論は現実的で効果的

諸外国では犯罪機会論が防犯の常識となっているが、日本ではいまだに「不審者」という「人」を警戒する犯罪原因論が主流だ。しかし、見た目で判別できない「不審者」を探したり、改善が困難な「心の闇」を考えるより、客観的に把握でき、改善も可能な「場所」に注目する方が、はるかに現実的で効果的といえる。

犯罪機会論は、状況的犯罪予防、環境犯罪学、合理的選択理論、日常活動理論、犯罪地理学、犯罪パターン理論、防御可能空間、防犯環境設計、割れ窓理論など、様々な名前で論じられてきた。それらは、ミクロかマクロか、ハードかソフトかという点で、力点の置き方が異なるものの、いずれも、犯罪が起こる確率の高い状況を解明しようとするものだ。

「犯罪抑止の3要素」とは
【関連記事】