「犯罪抑止の3要素」とは
もっとも、犯罪機会論を、だれでも、いつでも、どこででも活用できるようにするためには、多種多様な知見を単純化し、犯罪機会論の操作性を向上させなければならない。そこで、筆者は犯罪機会論の研究成果を集約し、「犯罪抑止の3要素」を提案している(図1)。
図1 犯罪抑止の3要素
1:「抵抗性」とは、犯罪者の標的、つまり潜在的な被害者または被害物に関する要素であり、犯罪者から加わる力を押し返す性質のこと──言い換えれば、犯罪行為に対抗する強度だ。抵抗性は、物理的な「恒常性」と心理的な「管理意識」から構成される。
このうち恒常性とは、一定していて変化しない状態のことだ。それを高める手法としては、ロック(錠)、マーキング(印付け)、強化ガラス、防犯ブザー、非常ベル、防弾チョッキ、イモビライザー、消火器などがある。
一方、管理意識とは、望ましい状態を維持しようという意思のことだ。それを高める手法としては、リスクマインド(危険予測思考)、指差確認、整理整頓、健康管理、情報収集、プライバシー保護、避難訓練、護身術などがある。
このように、抵抗性は一人ひとりが高める性能であり、したがって「個別的防犯」の手法と言える。これに対し、領域性と監視性は人々が協力して高める性能であり、したがって「集団的防犯」の手法だ。
2:「領域性」とは、犯罪者の標的の周辺環境に関する要素であり、犯罪者の力が及ばない範囲をはっきりさせる性質のこと──言い換えれば、犯行対象へのアプローチの難易度だ。領域性は、物理的な「区画性」と心理的な「縄張り意識」から構成される。
このうち区画性とは、境界を設けて他から区別されている状態のことだ。それを高める手法としては、ガードレール、フェンス、ゲート(門)、ハンプ(凸部)、ゾーニング(区割り)、チェーンスタンド、フィルタリング(閲覧制限)、パーティション(仕切り板)、ビームセンサー(光線式感知器)などがある。
一方、縄張り意識とは、犯罪者の侵入を許さないという意思のことだ。それを高める手法としては、パトロール、民間交番、防犯看板、受付記帳、パスポート、手荷物検査、警備員配置などがある。区画性が標的への接近を妨げる客観的なバリアなのに対し、縄張り意識は標的への接近を妨げる主観的なバリアだ。