この脆弱性は経済構造にも色濃く表れている。多くのパキスタン国民が国外に職を求め、出稼ぎ労働者の95%は湾岸地域(その約6割がサウジアラビア)で働き、母国への送金額はGDPの約1割に上る。

石油の約8割を湾岸諸国からの輸入に依存し、燃料価格の高騰やガソリン不足に陥るなど、中東情勢の悪化が国内経済に波及している。

何よりも、隣国インドとの長年の対立が依然として不安定要因となっている。25年5月のカシミール地方での軍事衝突では、トランプ米大統領が仲介に乗り出した。

インドのモディ首相がその結果としての停戦を否定した一方で、パキスタンのシャリフ首相はトランプの手腕を称賛。その後もパキスタンはトランプが主導するガザ「平和評議会」への参加やノーベル平和賞への推薦、さらにはニューヨークの再開発案件をめぐる米政府との合意などトランプに秋波を送り続ける。

では、このパキスタンの一連の動きをどのように見たらいいのか。

パキスタンは、アメリカとイランが交渉に行き詰まった結果、消去法的に仲介者として選ばれたにすぎず、同国の影響力が本質的に高まったわけではない(バングラデシュのアナリスト)など、冷静な見方も一部にはある。

しかし、見過ごせないのは、パキスタンがイスラム圏で唯一の核保有国である点だ。25年9月にはサウジアラビアと戦略的相互防衛協定を締結し、中東における安全保障の新機軸を打ち出した。アメリカへの信頼が揺らぐなか、湾岸諸国側がパキスタンに接近したという側面もある。

引き受け手の少ない難役
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