島国のシンガポールは半世紀以上、自国で消費する水の半分を隣国マレーシアから輸入してきた。しかし、膨れ上がる債務の削減を目指すマレーシアの新首相によって水供給契約は見直される可能性が出てきた。

シンガポールはかつてマレーシアの一部だったが、1965年に分離独立。その後、何年にもわたって両国の経済・外交取引に影を落とした。その関係はいまだに不安定なままだ。

マレーシア首相に返り咲いたマハティール氏は、最初の数週間で数々のプロジェクトにブレーキをかけ、閣僚の給与をカットした。過去の政権による汚職のせいだと同首相が非難する、約1兆リンギ(約27兆円)に上る同国債務を削減するためだ。

マハティール首相は、シンガポールに売る水の価格に狙いを定めている。

「全くばかげていると思う」と、マハティール首相は25日、シンガポールとの水供給契約について、シンガポールの国営テレビ局チャンネルニュース・アジアとのインタビューで語った。

「1990年代、あるいは1930年代であれば問題なかった」と述べ、契約の再交渉を求める意向を示した。

同日行われた記者会見で水問題について聞かれると、マハティール首相は「急を要する問題ではない」と一蹴した。

シンガポール外務省は同日、電子メールで「両国とも全ての合意条件を完全に順守しなければならない」との声明を発表した。

シンガポールとマレーシアの緊張は、マハティール氏が最初に首相を務めた1981─2003年に高まった。水を巡る対立も難しい両国関係の一因となった。今年の5月に首相復帰してから、92歳のマハティール氏は、首都クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画を中止すると表明。また、領有権問題の対象となっている沖合の岩礁を開発する意向を示している。

マハティール首相が水供給問題を蒸し返しているのは、見せかけだとみる専門家もいる。首相が表明したように、マレーシアが高速鉄道計画から手を引けば、同国はシンガポールに違約金を支払わなくてはならない。

「カネだけの問題ではない。彼(マハティール氏)は非常に抜け目ない政治家だ」と、シンガポール国際問題研究所で安全保障問題などを担当するニコラス・ファン氏は言う。「異なるレバーを用意して、それを引くことで特定の結果を得る術を熟知している」

水を巡りせめぎ合った歴史