逆から見れば、ここまで強烈に「党への忠誠」を誓わせないと、人心が離れていくことへの恐怖があるのだろうということが透けて見える。
後者の「軍民融合」は注目しなければならない。
これはハイテク化されていく軍事力の中で、科学技術を「民間企業にも担わせる」という「軍事産業」の奨励を指示した言葉だ。
2015年3月12日、全人代(全国人民代表大会)が開催されている最中の「中国人民解放軍代表団全体会議」において、習近平は「軍民融合発展計画を国家戦略にレベルアップする」と宣言した。
会議では、アメリカでは軍事産業によって国防部は毎年300億ドルの予算節減をしているということが話題になっている。ここでも「アメリカに追いつけ追い越せ」精神が働いていた。
2017年1月22日に開催した中国共産党中央委員会(中共中央)政治局会議では、「中央軍民融合発展委員会」を発足させることを決議し、習近平が委員長を務めることが決まった。
8月1日のスピーチで習近平は「軍民融合により、国防を強化することができるとともに、軍事産業を通して経済発展を押し上げる」と強調した。それが「中華民族の偉大なる復興」につながるとしながらも、「法律に従って実施しなければならない」と、当たり前のことを注意し、そこに新たな「腐敗」が生まれないように釘を刺したのには驚いた。まさに、どんなに最新鋭の武器を揃えても、「紅い王朝もまた腐敗で滅びる」ことを習近平自身も懸念している事実を如実に示していると痛感した。
ただ、在米の中国人留学生数は20数万人に達し、在米留学生の約30%を占める。しかもほとんどが博士課程だ。彼らがアメリカの先端技術を学んで中国に帰国し、軍民融合の各軍事産業で活躍すれば、「民主と言論の自由」以外でなら、やがてアメリカに追いつき、追い越すだろう。
少なからぬ日本のメディアあるいはチャイナ・ウォッチャーは、何でも権力闘争に持っていこうとする。それは中国を見る目を曇らせる。軍事に関する習近平の行動の先にあるのは、アメリカを凌駕する「強軍大国」への野望だ。軍を強化することが、同時に軍事産業として経済を活性化させる。中国は今、宇宙開発にさえ照準を当て重きを置いている。
言論の自由と人間の尊厳のために、筆者は中国共産党政権の思想的および歴史的史実に関する欺瞞に対しては一歩も引かないが、少なくとも(いや、だからこそ)、こういった現実は直視し、日本の国益を損ねないようにしたいと思っている。
