[7日 ロイター] - サービス開始予定まで、残り数週間。ここに来てドナルド・トランプ前米大統領の新規メディア事業は、自社アプリの微妙なバランスを保つ道を探っている。アップルとグーグルが提供するアプリストアの規定に抵触しないようにしつつ、トランプ氏の支持層に「表現の自由」を与えるという難題だ。
トランプ氏がフェイスブックやツイッター、ユーチューブから排除されて1年、同氏独自のソーシャルメディア「トゥルース(真実)・ソーシャル」が登場する。トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)をはじめ、言論の自由を旗印に掲げるテクノロジー企業は、保守派曰く「自由な表現を抑圧してきた」シリコンバレーの門番たちに匹敵するほど規模を拡大できるのか、このアプリが重要な試金石になる。
TMTGは「トゥルース・ソーシャル」を通じて「魅力的で、検閲とは無縁の体験」を提供することを約束。ワクチン接種や2020年の大統領選挙の結果など、今日の米国におけるホットな争点に対する自分たちの意見が、主流のソーシャルメディアから排除されていると感じる層にアピールしようとしている。
とはいえ、トランプ陣営のテクノロジー担当チームは「トゥルース・ソーシャル」がアップルやアルファベット傘下のグーグルが運営するアプリストアから排除されないよう、予防線を張っておく必要がある。トランプ氏の支持者が多く利用していたが、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件の後にアプリストアから削除された米新興SNS(交流サイト)「パーラー」の前例もある。こういったストアがなければ、大半のスマホユーザーが簡単に同アプリをダウンロードできなくなってしまう。
事情に通じた2人の人物によれば、こうした「プラットフォームからの排除」リスクは、かつて連邦下院議員(共和党)を務めたこともあるTMTGのデビン・ヌネス最高経営責任者(CEO)にとって、アプリ開発における最重要課題だという。「トゥルース・ソーシャル」が公開初日からハッカーの標的になるという認識に基づき、ヌネス氏は「国家レベル」のサイバー関連人材を欲しがっている、と1人は言う。ヌネス氏は、TMTGとしては3月末までに「トゥルース・ソーシャル」を立ち上げることが目標だと公言している。
TMTGの広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
同社については依然として不透明な部分が多く、IT・メディア業界の中には懐疑的な見方もある。保守系メディアの経営幹部2人は、TMTGが11月としていたベータ版のサービス提供開始が、計画倒れに終わったもようだと指摘。さらに、TMTGが実体のない「張りぼて」にすぎないのではないかという根拠として、ヌネス氏を除けば、メディア、IT、政界の有力者の関与が伝えられていない点を挙げた。
「私や私のチームには何のアプローチもない」と保守系メディアの関係者は語った。「トランプ氏はいつも(自分の)島の中だけにいるようなものだ」
<困難なコンテンツ監視>
TMTGは「ビッグテック(巨大IT企業)への抵抗」という使命を掲げるが、スマホ市場で優位に立つアプリストアを抱えるグーグルとアップルに依存しているようでは限界がある。TMTGでは、サンフランシスコを本拠に人工知能(AI)ベースのコンテンツモデレーション(内容監視)を行うハイブ社と提携。性的に露骨な表現やヘイトスピーチ、いじめや暴力的なコンテンツを検出している。TMTGの事情に詳しい人物によれば、ハイブとの提携に至った1つの要因として、「トゥルース・ソーシャル」をアップルやグーグルのアプリストアに残してほしいというTMTGの願望があったという。
「トゥルース・ソーシャル」では、自動検知と人間によるチームの双方、さらにはユーザーが攻撃的な投稿を通報できる手段といった、しっかりしたコンテンツ監視の仕組みが必要になるだろうと語るのは、スタンフォード大学インターネット観測所の最高技術責任者(CTO)を務めるビッグデータ専門家、デビッド・ティール氏だ。
「『パーラー』と同じような状況に陥ると話はややこしくなる。つまり、ホスティングサービスや、さらにはアップストアが目をつけ始めるほどヘイトスピーチの程度がひどくなった場合だ」とティール氏は言う。
「トゥルース・ソーシャル」は、アップルが運営する「アップストア」の規則に従うことになるが、そこでは開発者に対し、利用者が攻撃的なコンテンツを通報するための手段を提供し、「迅速な対応」を行うことを求めている。また「暴力を奨励」するコンテンツや、「武器や危険物の違法な、あるいは無謀な使用を奨励するような描写」を禁じている。
TMTGのウェブサイトでは2月4日の時点で技術職の求人が12件掲載されており、そこにはアンドロイド担当チームに参加する開発担当者1人、iOS担当エンジニア1人が含まれている。掲載情報によれば、給与は8万ー22万ドル(最大2540万円)。「資金潤沢」で「リモートワーク優先」、そして「保守派寄り」のスタートアップ企業で働きたい人材が歓迎されている。iOS担当エンジニアに求められる要件は「アップルのヒューマン・インターフェース・ガイドラインと、(ガイドラインというより規則に近い)アップストア・レビュー・ガイドラインについて知識を持つこと」だ。求人案件の1つでは、理想的なタイプは「好戦的な社風を楽しみ、より少ない資源で多くの成果をあげる」人材とされている。
TMTGのサイトに掲載された求人情報によれば、同社は特に、バックエンド向けプログラム言語「エリクサー」での開発経験をもつ人材を最低1名採用したいとしている。
ヌネス氏は1月13日、ラジオDJのレイ・アップルトン氏によるインタビューの中で、TMTGは現在フロリダ州パームビーチを拠点としているが、もっと長期的な立地を探すことになるはずで、その場合でもシリコンバレーよりフロリダ、テネシー、テキサスといった州を優先すると述べた。事情に詳しい2人の人物によれば、設立からまもない数カ月間、技術系の人材の一部はアトランタ周辺で働いていたという。
(翻訳:エァクレーレン)